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「ごはんよ」母の声。
夕食の時間。三連休だから少しゆったりとした時間が流れていた。
ピロンピロン
食卓で奏太のスマホが鳴る。ラインだ。普段からよく鳴っている印象がある。
母が反応した。
「夕食の時間ぐらいスマホをいじるのはよしなさい」
「うん」
「受験生なんだから、食事の席にスマホを持ってくるのはやめたらどうだ?」
父が珍しく注意する。
「そうだね。そうするよ」
素直に従う奏太。嫌な顔一つしないどころか笑顔。
なんてさわやかなんだ。
食後、食卓を離れた奏太に、電話がかかってきた。
フルーツをつまんでいた僕は思わず会話を耳にする。
「もしもし」
女子だ。僕はすぐわかった。声が少しハイトーンだから。
「さっきの問題わからなかったのかあ。来週教えてやるよー」
なぬ。余裕をかましている。本当に余裕があるのだろうけど。
僕は3年生になってから、スマホを絶ち、すべてを勉学に注入しているのに。奴はハイレベルなH高女子と交流しながら、勉強と両立させている。
うらやま…。
いけね。人間の感情が沸き起こってきた。
僕は急いで席を立ち、ロボットになるべく自室へと向かった。
最近、ちょっと緩んできたところだったから、『モテたい』心の炎が焚き付けられて、ますます勉強に身が入った。奏太のおかげだ。
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