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昼間は気持ちいいけど、朝晩が冷える秋。ブレザー姿がちょうどよくなってきた。
帰り道、信号待ちしていた結菜に声をかけた。顔を合わせてのは久しぶりだ。もう暗くて、顔がよく見えなかったから、緊張しなかった。
「あ、元気?」
「まあまあ。あれ? 洋太、少し大きくなった?」
「やっと奏太と同じになったよ」
「やっぱり双子だね。ところでさあ、受験校決めた?」
「農学部のあるとこを受けるよ」
「農学部? 農業するの?」
暗くても、結菜が目を大きく見開いているのが何となくわかった。仕方がない。農業は都会っ子の僕たちにとって、馴染みのない職業の1つだ。
「農学部だからって農業だけじゃないよ。今の農学部は、森林から生命、バイオまで幅が広いんだ」
「知らなかった。そっか、山が好きだもんね」
「結菜は?」
「私は美大に行きたいから、美大の予備校に通ってる」
「美大かあ。結菜おしゃれだから、ぴったりだよ」
「そお? デザインをやりたいの」
「そっかー。結菜なら大丈夫だよ」
「ならいいけど。洋太こそ大丈夫だよ」
「今が正念場。乗り越えればなんとかなるよ。がんばろうな!」
「うん、エイエイオー!」
「エイエイオー!」
結菜は掛け声をかけて腕を伸ばしたから、僕もつられて声を出して腕を振り上げる。
二人で顔を合わせて笑った。
結菜の自宅の前まで来た。
「じゃあね。がんばろうね。バイバイ」
「うん、がんばろう! バイバイ」
僕は結菜と話せて心がいっぱいに充電された。
まもなく年末が来る。ラストスパートだ。
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