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猛勉のかいあって、第一志望の大学の農学部、森林学科に合格した。奏太も結菜も。ちなみに奏太は経済学部。はしっこい奏太らしいし、モテる奴がいきそうなイメージの学部だ。
頭脳に関して言えば、ようやく奏太と並んだと思う。嬉しかったのはもちろんだが、心底ホッとした。
気が大きくなった僕は結菜に思いを伝えたいと思った。
「奏太、結菜ちゃんのこと好きだから、告白したいんだけど」
「彼氏がいるらしいぜ、噂によると。俺も今は他に付き合ってる彼女がいるし」
「そっか。じゃあ仕方ないね」
3年ぶりの共学だが、学内にはまだ結菜を超える女性は見当たらない。
山も山登りも好きなので、サークルは体育会系でない山登りサークルに入部した。ここには、生物クラブの飯倉君のような存在の小出君がいた。やたら木に詳しく、山に登ると、いろんな種類の木の説明をしてくれる。おかげで、それまでは好きなヒノキやタイザンボクにしか目がいかなかった僕が、自然と樹木の名前を覚えて、学科の授業にもとても役に立ったから、小出君には感謝だ。
授業では、樹木を植え、育て、殖やす方法、樹木を中心とする植物の分布など、樹木と森林を研究するためのさまざまな専門知識や技法を学べるから、山に関する造詣が深まっている。高校の頃に生物の新種を発見したいと思ったが、ここなら、森林に生息する動植物の環境の調査もでき、フィールドワークも楽しい。
一方で、大自然の国カナダに留学するために、僕は行動し始めている。
これは長年の夢であり、また結菜に彼氏がいるなら、今がベストという気持ちからでもあった。
そのためには、バイトで資金を貯めることや留学のためにIELTSのスコアを取得することが必要だ。IELTSは一度受けたが予想外に低かったので、かなり努力しないと留学は難しいかもしれない。もし必要なスコア取得ができなかった場合、短期留学でもいいから、カナダの大自然の中で暮らしてみたい。
とにかくチャレンジをするのみ。バイトは塾講師で稼いでおり、足りなければ親に借りよう。
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