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「洋太、準備はできたか?」
「できた」
僕はこの日のために服を新調した。といっても、大学生の身分だからファストファッション。オリーブ色のチノパンに白いTシャツ、黒のジャケットを羽織った。ファッションセンスのない僕の精一杯のおしゃれ。
奏太は自慢のビンテージジーンズにネイビージャケット、その中にはお気に入りのデザイナーズTシャツ。奏太のこだわりが詰まっている。
僕は念入りに髪と顔の最終チェックをして、おしまいに、口角を上げて笑顔。よし、この顔でいこう。
準備は整った。
僕らは現地に向かう。言葉少なく。
「いいか。同時に言うんだぞ。どっちかが早いと有利になるかもしれないから。公平を期するんだ」
「わかってる」
最終確認を済ませた。
僕は固唾をのんだ。
そして現地に着いた。
都心の中央公園。
待ち合わせ場所の噴水の横で結菜が待っている。
「どうしたの?二人して呼び出して」
「うん、俺たち話があるんだ」
「そう、僕たち話があるんだ」
「いくぞ」
「いくぞ」
僕と奏太は目を合わせて合図した。
「好きです。付き合ってください」
2人のハモった声に合わせて、頭を下げ、結菜に手を差し出した。
僕は結菜が少しでも触れてくれるよう、なるべく先へ先へと手を伸ばした。奏太もそうしたに違いない。
お願いします。どうか、僕の手を握ってください。
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