4.

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 こういう時って、1分でも際限がない。何て長いんだろう。  どうか…  どうか…  お願いします…  僕は願い続けた。  その時。 「よおっし」  起き上がって見ると、奏太がガッツポーズをしている。  あ…  僕は膝から崩れ落ち座り込んだ。体に力が入らない。  やっぱり。  これが現実だ。  涙など出ない。  ただ現実を突き付けられただけ。  呆然(ぼうぜん)と座っている。 「ありがとう、結菜」  二人はしっかりと手を握り合っていた。  もう恋人(つな)ぎだ。  僕はすぐに目をそらし、立ち上がった。 「じゃあ、失礼するよ」 「俺たち、お昼食べに行くけど」 「いってらっしゃい」  僕は目も合わせずに言い残し、くるりと背を向けた。  二人は去って行った。  僕は少し離れたベンチに座った。まだ雑踏に行きたくない。  柔らかな日差しを浴びながら、風に揺れる木々を、焦点の定まらない目でボーと見ていた。  鳥がやってきた。  (すずめ)だ。   久しぶりに見た気がする。  雀って数が減ってるんだよなあ、確か。  よく見ると、かわいい。  こんな時は雀でも近くにいてくれるだけで心強い。  そういえば、結菜は鳥が好きだって昔言ってたけど、今はどうなんだろう…って、もう関係ないし。  木々が揺れている、サラサラ音をたてて。  落ち着く。  やっぱり自然はいつも僕の味方だ。  ようやくお腹が空いてきた。  公園の自然に慰められた僕は、これからどうしようか、と未来のことを考えながら歩き出した。
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