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振られても好きな人の彼氏と寝食を共にするってどういうこと?
辛すぎる…!
こういうことだよ。
こういう現実が待っていたんだ。
奏太はどう思っているんだろうか。最近、気を遣ってるのかわからないが、バイト、そしてデートで忙しいのだろう、家であまり見かけない。
今になって思えば、奏太と争うのは無謀だったかもしれない。
いや、待て。今後のために聞いておこう。
奏太にした決め手は何?
ほんとは聞きたくない。傷に塩を塗りたくるようなもんだから。でも今の僕には必要なんだ。
嫌だけど…スマホを持つ手が震える。
「も、もしもし」
「あ、洋太」
「今、大丈夫?」
「うん、いいよ。何?」
「あの、ちょっと聞いていい?」
「うん」
「どうして、奏太のが良かったのかなと思って。決め手は何だったのかな」
「そうねえ…」
結菜はしばらく考えていた。
「やっぱり、受験勉強の時、助けてもらってことかな」
「助けてもらった?」
「そう、問題を間違えて、解答を見てもいまいち意味がわからない時、たまに教えてもらったの」
「え…」
僕の頭は一瞬真っ白になった。
「おかげで、いい点とれたよ」
「あ、そっか。それは良かったね」
「うん、感謝してる」
「そうだね。そりゃそうだ。うん、わかった。教えてくれてありがとう。じゃあね」
「うん、じゃあ」
電話を切ると、僕はしばらくボーとしていた。
そして、脳裏にあのシーンが浮かんだ。
「あの問題、わからなかったのか~。来週にでも教えてやるよー」
まさか、ハイトーンな声の相手は、結菜?
いや、あの電話でないにしろ、普段から多かった着信音、あの中のいくつかは結菜だったのか…
もしかして、会って直接教えていたのかもしれない…
僕がスマホを絶っていた間にそんなことが…
その間、僕は結菜に偶然会って話して、お互い励まし合って満足していた。高嶺の花と話せるだけでうれしかった。
コミュニケーション能力。
この差だったんだ。
高いコミュニケーション能力は奏太にあって僕にはない。
じゃあ、奏太になくて僕だけのものって何だ?
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