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僕はすぐに非日常に引き戻された。
シン・ウイルスのせいで、オンライン授業となったからだ。慣れるのに必死で、失恋の痛手に浸っていられない。
木村から久しぶりに電話があった。
「もしもし」
「お、洋太。元気にしてるか?」
「どうにか元気だ」
「俺たち運が悪いよな。せっかくの青春時代がさ」
「ほんとだよ」
「なんというか、思ったより元気そうで良かった」
「思ったより? まあ、ウイルスにはやられてないよ」
「ん、いや、ね、聞いちゃったからさ、奏太のこと」
「あ、あれか」
「がっかりしてるんじゃないか?」
「少しはね」
「おまえも告白したのか?」
木村はいつも核心を突いてくる。こいつには嘘がつけない。
「まあな」
「それは辛かったな。やっぱり、そうだと思ったよ。昔からそうなると思ってたから」
「そういえば、昔そんなこと言ってたな」
中学の時、木村に言われたことを思い出した。
「俺の彼女の友達紹介しよっか?今はちょっと御時世が悪いから、落ち着いたら」
「うーん、考えとくよ」
「まあ、無理しないでいつでも言ってくれよ」
「わかった。気遣いありがとう」
「どういたしまして」
「じゃあな」
「じゃあ」
僕は思い出した、木村のあのセリフ。
「おまえら、将来、あいつの取り合いになったりして」
妙に心に引っかかっていた。
やっぱりあいつは鋭い。
あいついつもズケズケ言ってくるけど、それがかえって内に籠もっている僕を解放してくれてるようで、重かった気分が少し楽になった。
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