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   中学の頃から、僕と奏太は、一卵性双生児なのに性格が違ってきた。   奏太は、何というか、社交的で協調性がある。  僕は皆でワイワイするのは好きだが、一人の時間も同じぐらい好きだ。  だから、部活も個人競技の水泳部。スジは良いけど本番に弱く、大会の試合になると負けるから、部内でも上位に行けない情けないパターンに(おちい)っている。  サッカー部で活躍している奏太が(まぶ)しかった。  文武両道に優れているから、とてもモテる。  おかげで、バレンタインデーには、僕の周辺まで騒がしい。 「あの、これ受け取ってください」 「は?はあ」  その見知らぬ女子は走り去った。  一瞬期待するが、中身を見ては奏太と間違えられたことに気づき落胆。家に持ち帰って、手渡すのも気まずいから、奏太の机の上にそっと置いておく。  こんなことが毎年ある。  だが、僕は卑屈な奴にならずにすんだ。  奏太が僕を気遣ってるのかわからないけど、バレンタインデーの話を家族や友達に一切しないから。  それに、女友達が多かったけど、勉強の妨げになるからって、彼女は作らない。それがかえって、モテに拍車(はくしゃ)を掛けていたけどね。  バレンタインデーの夜も、食卓の彼はいつもと同じようにご飯を平らげながら、サッカーの話などをしている。僕はいつもより口数が少ないけど。  だから、両親は今日が何の日かを忘れているようだ。  僕はこんな冷静沈着な彼の態度を惚れ惚れしながら眺めている。そして、尊敬する。モテ自慢しないなんて、本当によくできた人間だと思う。  僕だったら、どうだろう。でもその前に、前提条件として、モテる経験をしてない…。卑屈にはなってないけど…やっぱりモテるのは(うらや)ましい。チョコレート何個もらったとか、僕はたぶんモテ自慢してしまうだろうな。
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