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3.
僕たちは志望した高校に入学した。
僕は男子校に通っている。
男子だけだと居心地がいい。が、当たり前だけど華がない。
女の若い先生に片思いしている奴がいると聞いた。
僕だって、あの中年の英語の先生でも素敵だなと思う時がある。
いや、若ければいいってもんじゃないけど…。
僕は生物クラブに入った。山が好きだけど山岳部は本格的過ぎる。生物クラブはおとなしめの奴が集まっていて僕に合う気がした。中でも、飯倉君は天然だから、特に僕と波長が合った。
活動は週末に川や山に行って、生物を採取して、種類を調べたり、飼育したりしている。
夏は川の水が冷たくて気持ちいいから、水生生物を取るのがほんと楽しい。
特に甲殻類が網に引っかかった時は一番テンションが上がる。
「やった、ザリガニが二匹、それにカニもだ」
「それは、アメリカザリガニとモクズガニだね。たくさんいるから、よく取れるよ」
「家で飼育しよ」
「あ、水槽には一匹だけだよ。共食いするから」
「え、そうなの!」
飯倉君も僕に網の中を見せてくれた。
「何? おもしろい顔」
「これ、トビハゼ」
「へー、よく見ると、カエルみたいな顔をしてかわいい」
「そうだろ。僕、気に入ってんだ」
飯倉君は水生生物に詳しいから、顧問の先生も聞きに来ることがある。そこんとこ、飯倉君を尊敬している。
僕の夢は、新種を見つけること。叶ったら最高だな。
こんな女っ気のない日々を過ごしていて、「モテたい」なんて話から遠ざかっている。でも僕にはこれが気楽だ。
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