すれ違う気持ちと振る舞い

2/2
前へ
/10ページ
次へ
「誰でもいいと言ってただろう」 「誰でもいいなんて言ってねーよ、失礼極まりねぇな」 淡々とした口調の夏目に余計に腹が立ち、カレーを食べるスピードも速くなる。それでもスンとしたままの夏目にいい加減ブチ切れて 「男でも女でも、どっちでもいいとは言ったけどな、誰でもいいなんて言ってねぇよ!」 大きな声でそう言い、急いでカレーを掻き込むと席を立った。近くの奴らがチラリと見ていたけど、そんなの無視だ、俺は腹が立って悲しくて堪らない。 「俺は、俺の好みのヤツしか相手にしねーから」 あまりの怒りと悲しみに、思わず自分の本音が出てしまって「あっ」と思ったけど、もういい!とヤケになって席を立った。 そうだよな、友達にあんな事されて自分だって達しちまった手前「不愉快だった」なんて、夏目からしたら言えないよな、と食堂を出てから一人であれこれと考えて落ち込んだ。 夏目に合わせる顔がなくやはり謝ろうかとも思ったが、また淡々とした態度や口調で言われるのが嫌だなと思い、傍には行かなかったし、声も掛けなかった。つまらないし、切ない。 他の奴らと馬鹿な話しをして笑いながら、何でも無い様な夏目の姿を目の端に置いた。 気が付くといつも夏目はいなくて、大学に来ているのか心配になる。傍には行かないけど、夏目の事は探していた。 「夏目、見た?」 「いや」 「最近見てないけど、具合でも悪いのか?」 「え?昨日見たぜ」 「どこで!?」 「講義室にいたじゃん」「食堂で見た」「帰るのを見た」 そんな会話を何人もとしたが、俺は夏目の姿を見る事が無かった。 「久喜、来週の土曜の飲み会、来るだろう?」 「ああ、その日は予定があるから行かねぇ」 あの宅飲みに一緒にいた小島から誘われたが、その日は就活の件で先輩と会う約束をしていた。俺だって、本気で考え始めた。夏目とまた一緒にいたいから、ちゃんとしなきゃと思って先輩から話しを聞こうと約束を取り付けた日だった。 「お前が来ないなんて珍しいな」 「俺だって予定くらいあるわ」 俺が真面目にやってると笑われそうだから、先輩と会う話は伏せた。 少しほとぼりが冷めて真面目な俺を見たら、夏目も普通に接してくれるかも知れないと思って、俺は心を入れ替えて真剣に取り組もうと頑張ってみる事にした。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

367人が本棚に入れています
本棚に追加