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俺が辛うじて進学出来た高校は、なんと言うか、もう…絵に書いたような不良校だった。
フィクションかな?ドラマのセットかな?ってくらい。落書きなんか序の口。何でこんなとこ壊れてんの?補修しないの?ってとこがたくさんあったけど、補修したってそばからまた破壊されるからキリが無いって事だったんだろうな。
入学式で見た同級生たちもさ、同じ新入生だってのに超イカちい奴とか多くて。そりゃ中には普通っぽい生徒もちらほらいたけど、絶妙にダサかったり。ゴツくて芋臭い連中ばっかりだった。
そんな中に線の細いチャラッとした俺が入ったから、すごい浮いてたみたい。そこで悪目立ちしたら、そりゃヤバい連中に目をつけられるよな。
成長を見越して少し大きめの学ランを着てた俺はだいぶ華奢でちょろく見えたんだろう。喧嘩なんてした事無かったから実際弱っちかったけどさ。
入学式後にクラスに行ってもまともに座ってる奴なんかいるのかよって思ってたけど、初日だからか意外にもまともに殆どの生徒がいてさ。髪色はともかく、制服も着崩してる奴は少なかった。でも翌日には頭はカラフルになって着崩し全開になってたから笑った。マジで底辺校って中学でどうしようもなかった連中の吹き溜まりなんだな~って自嘲してた、そんな2日目の昼休み。
来たんだよ、2人の2年生が。
冴えない連中しか来ないと思ってた学校に、こんな連中いるんだ?ってポカンとするくらい垢抜けた、背の高い2人組だった。
黒髪に金メッシュのショートと、銀髪のショート。それでピアスとかバチバチに開いてて、学ランをまあまあカッコ良く着崩してた。
こんなとここにもカッコイイ先輩っているのか、って思ったけど、どう見ても不良だから怖さの方が勝った。
『お前、橋本 凛?』
銀髪の方にそう聞かれて、こくんと頷いた。
『ちょっと一緒に来てくれるか?』
今度は金メッシュに言われて、背中に冷や汗が流れた。俺、何かやっちゃったっけ?知らない内に誰かの彼女とか寝取ってたかなって巡りの悪い頭をフル回転させてさ。でも日頃考える事にあんまり頭使わないからぜんっぜんわかんない。
何もわかんないまま2人に肩を組まれて連行されたんだよ、グラウンドの横にある体育倉庫に。
そこに押し込まれて、あー、こういうとこでフクロにされるのかってビクつきながら周りを見回したんだけど、中にいるの、奥の方に重ねてあるマットの上に座ってる人影が一人だけ。
明るい場所から急に暗い場所に入ったから、目が慣れるのに少し時間がかかって、ちゃんと見えない。
座って俺をじっと見てるその人影が男だって事くらいしか。でも俺より遥かに体格が良さそうってのはわかってさ。
え、こんな男から俺なんかが女寝取れる訳なくね?ってすぐに思った。じゃあ、単に手頃なサンドバッグを探してただけかよって更に血の気が引いた。
理由のあるボコりはわかるけど、理由無きボコりをするような奴だとかなりヤバい事になりそうだなって、瞬時に病院送りになる覚悟をした。
俺は怖くて下を向いたけど、その男からの視線はずっと感じ続けて震えてて、何時そいつがマットの上から動いたのかさえわからなかった。
「おい。」
急に近いところから声がして、心臓が止まりそうになった。
ぐいっと男の手に顎を持ち上げられて、初めて暗さに慣れた目で至近距離にある男の顔を見た。
驚いたよ。
さっきの2人より遥かに整った男の顔に。
薄暗がりで見てるってのを差し引いても、クソのつくくらいのイケメン。
何でこんなレベルの男がこんな僻地の高校に…って感じ。その時だけは怖さも忘れて見つめちゃったよ。
男は、思ってた通りデカかった。そんな腕で殴られたら、俺なんかひとたまりもないっていう、歴然とした体格差。
今からこんな奴に殴られなきゃなんないのかって、ちびりそうなくらい怖くて、また体の震えが再開。目がじわっと熱くなって、涙が滲んできたのがわかった。
そしたら、そんな俺に男が言ったんだ。
「…可愛い顔してんな。」
…って。
俺は一瞬、ポカンとした。
え、この男、今俺に可愛いって言った?
小学生まではぼちぼち言われてたけど、身長の伸びてきた中学くらいからは滅多に言われなくなった言葉だった。しかも、いくつも違わない男からなんて初めて。聞き間違いかなって思ったよ。
でも男はもう一度言ったんだ。
「昨日見かけた時から思ってたけど、お前マジで俺のタイプだわ。」
「へ、へっ?!」
そして流れるように奪われた唇。
俺、女の子達とはそれなりに経験してきたつもりだったけど、男とは勿論初めてだったからびっくりして固まった。
熱くて濡れたそれが俺の唇を蹂躙していくのに、逃げられなかった。ショックでクラッとして、膝が折れそうになったら腰に回ってきた腕に支えられて、後頭部も掴まれて、舌を余計に入れられた。
本気で酸欠を起こして気を失いそうになってから、やっと離してもらえて、息を整えてる間に抱き上げられてマットの上に運ばれた。
俺を見下ろしてくる男の目が、光も無い部屋の中でぎらりと光っているように見えた。
(フクロじゃ、ない…のか?)
なんて頭の中の疑問は聞けない。鈍い俺でももうわかってた。
俺は、この男の捌け口にされる為に呼ばれたんだって。
逃げたいと思って出入り口の扉を見た。だけど当たり前にそこはぴったり閉まってる。もしあそこを開けられて出られたとしても、外にさっきの2人が見張りで居たらすぐに捕まる。
それに、そんな風に逃げて連れ戻されたら、この男を逆上させてしまうんじゃないかって、そう思った。
それならまだ優しい間にされる方が、酷くされなくて済むんじゃないかって。
弱い俺は弱いなりに無い頭で計算したんだ。それで、最小限のダメージで済みそうな方を選択する事にした。
大人しくしてれば、きっと短時間で終わってくれる。殴られながら痛くて怖い思いをしながらされるレイプより、まだ優しくされる方が良いじゃん?
同じレイプでも、さ。
俺は諦めて、男を見上げた。それで全身の力を抜いて、震えの止まらない体を明け渡した。
そして、優しいレイプなんて甘かったって事を思い知らされた。
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