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救助
ああ、何処も彼処も真っ赤だなあ・・・
自室の窓からぼんやりと外を眺めていたフランクリンは、1人の人間が宇宙服を着て、基地から出て行くのを見つけた。
あれは誰だ?基地外活動の予定なんてあったっけか?
頭を捻り考え込む。
いや、待てよ。火星の嵐が、もう直ぐこの辺りまでやって来る筈だが・・・
それを押してまで基地から出なくてはいけない、そんな重要な任務があったか?いや、ある筈がない。そんな危険なこと、司令官が命じる訳がない。
フランクリンは慌てて立ち上がり、司令室に向った。
「司令官!」
司令室に駆け込み、モーガンに声をかける。
「どうしたフランク。」
フランクリンは何時になく真剣な表情でモーガンに言った。
「司令官、さっき誰かが基地外へ出たのを見たのですが・・・何かあったのですか?」
モーガンが眉根を寄せて首を振る。
「いや、火星の嵐がそこまで来ているときに、基地外に出るような作業を、命じた覚えはない。」
一瞬考えて、パッと立ち上がった。レーダーの前に座るエリックに、直ぐ命じる。
「エリック、レーダーで捜索。」
「了解。」
エリックがコンソールに向ったのを見て、リチャードに「リチャード、誰が基地から出たのか確認するように。」と告げた。
リチャードは頷いて、直ぐ確認作業を始めた。
「フランク、フィル、デミトリ、一緒に来てくれ。」
司令室を出て行きながら、レオナルドに言う。
「レオ、後を頼む。」
「は、了解しました。」
レオナルドは、モーガンの背中を見送ってホッと溜息をついた。
まったくあの人は。きっと基地外に、自分が出て行くつもりなんだ。司令官なのだから、細々した事は部下に任せて、ここでゆったり構えていれば良いものを。司令官の体を心配している、私達の身にもなってもらいたい。とはいえ、彼は絶対此処で座っていることなど出来ない性質なんだろうな。
密かに笑った。
「副司令官、ロシアのイワン・ニコラエフ少佐の所在が分かりません。」
リチャードの報告に頷き、通信機のスイッチを入れた。
「司令官、ロシアのニコラエフ少佐の所在が分からないようです。基地を出たのは彼かと。」
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