フランクリンの想い

2/3
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/340ページ
医療室に着くと、案の定ミシュノフは居なかった。 ポーリーが1人器具の準備をしているところに、モーガン達は入って行った。 ポーリーは看護師の資格を持っていたので、今は医療室でミシュノフと一緒に働いていた。 「ポーリー、君1人か?」 モーガンに聞かれ小さく頷いた。 「はい。先生は休憩されていると思います。」 「そうか・・」 少し俯いたモーガンに「私、呼んできます。」と踵(かかと)を合わせた。そのまま踵(きびす)を返し部屋から出て行く。モーガンが止める間もなかった。思わずフランクリンと顔を見合わせた。 「ポーリーはああ見えて、少々早とちりなところがあるんで。」 フランクリンが僅かに笑って言った。モーガンも笑う。モーガンはそのままイワンに向いた。 「イワン、さあ此処に座りなさい。」 医療室の隅にあるソファーに連れて行く。イワンを座らせ、フランクリンと2人、イワンの前に座った。少しだけ間を置いてモーガンが口を開いた。 「イワン、君が自分のした事で悩んでいる事は知っていたよ。しかし、君のお陰で助かった兵もいるのだ。もうそろそろ自分を許してやっても良いんじゃないか?」 優しい瞳で見つめる。イワンは何も言わず、俯いていた。 自分を許す事など出来る訳が無かった。自分のした事は艦隊の兵としても、また人間としても許されるものではない。 その時、医療室の通信機がコール音を発した。驚いて顔を上げる。 「司令官、申し訳ありませんが、今すぐ司令室においでください。」 通信機に近づきモーガンが答えた。 「レオ、どうした?」 「はい。嵐の直撃で、生化学研究室の外壁に、亀裂が入ったようです。」 「分かった。直ぐ行く。」 モーガンは通信機を切って、フランクリンに向いた。 「フランク、私は今から司令室に戻らなければならない。イワンの事、頼めるか?」 フランクリンは微笑んで頷いた。 「私にお任せください。ミシュノフ先生に看て頂いて、彼を部屋まで送り届けますよ。」 モーガンはイワンの肩を軽く叩き、医療室を出て行った。
/340ページ

最初のコメントを投稿しよう!