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医療室に着くと、案の定ミシュノフは居なかった。
ポーリーが1人器具の準備をしているところに、モーガン達は入って行った。
ポーリーは看護師の資格を持っていたので、今は医療室でミシュノフと一緒に働いていた。
「ポーリー、君1人か?」
モーガンに聞かれ小さく頷いた。
「はい。先生は休憩されていると思います。」
「そうか・・」
少し俯いたモーガンに「私、呼んできます。」と踵(かかと)を合わせた。そのまま踵(きびす)を返し部屋から出て行く。モーガンが止める間もなかった。思わずフランクリンと顔を見合わせた。
「ポーリーはああ見えて、少々早とちりなところがあるんで。」
フランクリンが僅かに笑って言った。モーガンも笑う。モーガンはそのままイワンに向いた。
「イワン、さあ此処に座りなさい。」
医療室の隅にあるソファーに連れて行く。イワンを座らせ、フランクリンと2人、イワンの前に座った。少しだけ間を置いてモーガンが口を開いた。
「イワン、君が自分のした事で悩んでいる事は知っていたよ。しかし、君のお陰で助かった兵もいるのだ。もうそろそろ自分を許してやっても良いんじゃないか?」
優しい瞳で見つめる。イワンは何も言わず、俯いていた。
自分を許す事など出来る訳が無かった。自分のした事は艦隊の兵としても、また人間としても許されるものではない。
その時、医療室の通信機がコール音を発した。驚いて顔を上げる。
「司令官、申し訳ありませんが、今すぐ司令室においでください。」
通信機に近づきモーガンが答えた。
「レオ、どうした?」
「はい。嵐の直撃で、生化学研究室の外壁に、亀裂が入ったようです。」
「分かった。直ぐ行く。」
モーガンは通信機を切って、フランクリンに向いた。
「フランク、私は今から司令室に戻らなければならない。イワンの事、頼めるか?」
フランクリンは微笑んで頷いた。
「私にお任せください。ミシュノフ先生に看て頂いて、彼を部屋まで送り届けますよ。」
モーガンはイワンの肩を軽く叩き、医療室を出て行った。
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