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フランクリンはイワンを静かに見つめた。彼は呆然と座っているようで。
「私は仲間を裏切った。」
イワンが呟くように言った言葉を聞き、フランクリンは僅かに首を傾げた。
「知ってるさ、そんなこと。」
「じゃあ何故私を助けた。私はもう・・」
顔を両手で覆い俯く。
「俺は君がしたことを、肯定はしないよ。何せ、それまで一緒に戦ってきた仲間を、手に掛けたんだから。」
イワンが苦しそうに顔を歪める。
「でも、否定もしない。君がしたことを否定すれば、今此処にいるロシアの兵たちみんなを、否定することになるからね。」
イワンが僅かに顔を上げた。
「確かに、君は仲間の命を奪ったけど、それ以上にたくさんの命を救ったってこと、忘れないで貰いたいんだ。君に感謝している人間が、沢山いるってことを覚えていてほしい。」
そう言ってフランクリンは、優しい笑顔を向けた。
「今はきっととても辛いだろう。そのことを、一生忘れることはできないだろうけど。君がそれに足止めされて其処に留まることを、だれも望んではいない。」
イワンの目を見つめる。
「こんな事を言ったところで、君の心が軽くなる訳ではないと思うけどね。しかし少しずつ前に進んでいかないか?俺たちと一緒に。君の仲間たちと一緒に。」
フランクリンがそう言ったとき、ミシュノフが医療室に帰って来た。
イワンの体に異常はなく、フランクリンは彼に付き添って彼の部屋まで送った。
「今日は、ゆっくり寝るんだ。忘れようとせず、受け入れるようにしろ。そうすればきっと楽になる。君にはみんなが付いている。辛い時は誰にでも相談すればいい。君が信頼できる人に。君の心を受け止めてくれる人に。」
フランクリンはそう言って、イワンの肩を叩いた。
「俺で良ければ何時だって話を聞くぞ。じゃあ、ニコラエフ少佐、お休み。」
フランクリンは笑って離れていった。
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