イワンとポーリー

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イワンとポーリー

フランクリンの背中を見送り部屋に入る。 部屋の窓から外を見ると、嵐が吹き荒れていた。 今なら・・・今此処を出れば・・・ イワンははじかれたように部屋を出た。ノロノロとエアロックに向かう。 エアロックに入り、外扉を開けようとして、手を止めた。フランクリンの言葉が頭によみがえり、呆然とそこにあった椅子に座り込んだ。 私はどうすればいい?この苦しみを終わらせるために、命を絶とうと思った。しかし・・・ 「君がしたことを否定すれば、君と一緒に来たロシア兵全部を否定することになる。君に感謝している人間が沢山いることを、忘れないでほしい。」 フランクリンの優しい瞳が頭を過る。 私は・・・ 静かに窓の外を見る。 考えてみればあの時、宇宙服を着ずに此処から出ていれば、この苦しみを終わりにしたいという、自分の思いは遂げられた訳で。 それなのに私は宇宙服を着て外に出た。あれは・・・誰かに助けて欲しかったからなのだろうか。私は死にたいといいながら、本当は生きて居たかったのだろうか。私は・・・どうしたいのだろう? 突然、基地からエアロックに入る扉が開かれた。驚いて顔を上げる。 「此処で何をしているんですか?」 小柄な女性アメリカ兵がそこで立って、イワンを見つめている。彼女はちょっとだけ首を傾げ、エアロックに入ってきた。 この子は何処かで・・ 「隣、いいですか?」 「あ、どうぞ。」 彼女はイワンの隣に腰を下ろし、ホッと溜息をついた。 「此処、私、良く来るんです。」 悲しげな顔で床を見つめながら、彼女は小さい声で言った。 「なぜこんな所へ?」 そう聞くイワンに、彼女は仄かに微笑んで答えた。 「此処から、ほら・・・マーロンが良く見えるでしょう?私、時々マーロンに乗って、地球へ帰りたくなるんです。」 「地球へですか?あんな滅んだ星へ、今更何故・・・」 「地球には私の愛した人が眠っています。だからここへ来るという話が出たとき、私泣いてしまって・・・」 はっとしたように顔を上げイワンを見た。 「ア、ごめんなさい。私アメリカ艦隊の、ポーリー・スタンレイです。貴方は・・・」
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