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イワンに視線を戻し、力強い声で言った。
「私、貴方のそういう強い心を見習いたいです。私は、本当に弱い人間だから。」
「私だって弱い人間ですよ。」
イワンも窓の外を見つめた。
「私は今、この扉を開けようと思っていました。そうすれば、仲間を裏切ったという苦しみから逃れられるからと。」
ポーリーに視線を戻す。
「でも、今そんな事をすると、貴方も道連れになってしまう。今は止めておきますよ。」
ポーリーが仄かに笑った。
「それで貴方の愛した方は、どんな人だったのですか?」
「彼は・・・」
2人はそこで、ゆっくりと長い時間を掛けて話をした。お互いが抱える苦しい心を、全て吐露することはできなかったが、何でもない話をしていると、心が凪いでくる。
「さて、貴方もお仕事があるでしょう?そろそろ戻りましょう。」
イワンがそう言って立ち上がった。ポーリーも立ち上がる。
「あの、イワンさん、また今度会えますか?」
小さく聞くポーリーに、イワンは優しい笑顔を向けた。
「勿論です。貴方が良ければ。」
「じゃあ、明日仕事が終わってから此処で。」
「分かりました。明日1800時に此処で。」
2人はそれじゃあと言い合って別れていった。
イワンは、何となく明日が楽しみだと思っている自分の心に驚いていた。さっきまで死のうかとすら思っていたのに・・・・
勝手なものだ。本当に人間の心は分からない。でも・・これで暫くは生きていける。
1人笑顔になる。イワンは少しだけ軽くなった足取りで、自室に向かった。
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