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それぞれの一歩
「ねえ、ジミー、貴方、何をするか決めた?」
食堂の隅のテーブルで、グレイスが正面に座ってコーヒーをチビチビ啜っているジミーに問いかけた。
「俺?」
ジミーはカップから顔を上げ首を傾げた。
「ああ、決めたよ。」
「何するの?」
「物理研究室で働こうかなって。」
「物理?貴方物理学・・・」
グレイスに笑いかけジミーが答えた。
「俺、大学に行けなかったけど、行けたら物理を専攻したかったんだ。昔からの夢が叶うんだ。だから俺、凄く嬉しい。」
グレイスはそうかと小さく呟いた。
「お前は?」
ジミーに聞かれ俯く。
「まだ決めてないのよ。私、何にも取り柄がないから・・・」
ジミーが笑って言った。
「取り柄も何も。お前、凄くいい声してるし。歌手にでもなったらどうだ?」
グレイスは顔を顰めジミーを睨んだ。
「ジミー、私が音痴なの知ってるでしょ?ちょと酷いんじゃない?」
「わるいわるい。けど、お前の声が凄く綺麗だってのはほんとのことだぞ。何かその声を生かせるようなこと、ないのか?」
声を生かす?私の声、そんなに綺麗なのかしら・・・
その時食堂に誰かが入ってきたのが見えた。
「あらバーバラ。此処で一緒に座らない?」
食堂に入ってきたのはバーバラだった。彼女は一瞬躊躇い、グレイスの隣に座った。
「お前も休憩か?何か取ってこようか?」
ジミーに聞かれ、小さく頷く。
「コーヒーでいいか?」
「はい。でもいいんですか?上官の貴方を使って。」
ジミーは立ち上がり、手をヒラヒラと振った。
「別にいいさ。まあ座ってグレイスと話しててくれ。」
「ありがとうございます。」
俯いたバーバラの様子に少し顔を顰め、ジミーはコーヒーを取りに向かった。
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