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「今ねこれからどんな仕事をするかって、2人で話していたところだったのよ。貴方はもう決めた?」
俯いたまま答えないバーバラに、グレイスはそっと彼女の肩を押さえた。
「バーバラ、どうしたの?何か悩みでもあるの?」
「ほれコーヒーだ。飲め。ま、本物には遠く及ばない味だけどな。」
ジミーが、コーヒーを持って帰って来た。バーバラの前にカップを置く。バーバラは唇を噛み締めて、カップを見つめた。
「私・・・私、好きな人がいて・・・」
「好きな人?」
バーバラは悲しそうに顔を歪め、顔を上げた。
「誰なの?その相手。」
グレイスに聞かれ、バーバラはまた俯いて黙ってしまった。
「もしかして・・・・司令官?」
小さく告げられたグレイスの言葉に、驚愕の表情も露わに彼女の顔を見た。
「私、何となく知ってたわ。貴方が司令官の事、好きだって。」
バーバラの瞳が揺れる。
「私、駄目だって自分に言い聞かせてきたの。でも、司令官の顔を見ると、やっぱり・・・諦められない。彼のことが・・・・大好きなの。」
「そっか。まあ俺も、司令官のことは大好きだけどな。」
「ちょっとジミー。」
グレイスが睨む。ジミーは優しく微笑んで言った。
「司令官はみんなのものだからな。多分、司令官もそう思ってる。だからお前が好きでもいいんじゃないか?お前1人のものにはならないかもだけどな。」
バーバラが顔を上げた。
「みんなのもの?」
「そうだ。みんなのもの。だからお前のものでもある。だろ?」
私のものでもある・・・・
「そう思うと、ちょっとだけ心が軽くならないか?確かに好きあって付き合って、そういう関係にはなれないかもしれないけどね。」
バーバラが小さく頷いた。
ジミー、貴方って、たまにいいこと言うわよね。
グレイスは、2人に分からないように微笑んだ。ジミーが時計を見て立ち上がった。
「さて、そろそろ勤務に戻るとするか?」
バーバラも一緒に立ち上がる。
「私も・・・戻ります。」
「まあ、あまり考え込むな。悩んでると老けちゃうぞ。」
ニッと笑ってバーバラの肩を叩いた。
「ええ、ありがとうございます。」
グレイスは、去っていく2人の背中を見送った。
多分、司令官がバーバラに振り向くことはないだろう。何となくそういう確信があった。彼女もきっとそれに気が付いている。だから、あんなに辛そうにしていた。
バーバラが辛い恋から立ち直れるよう、心で祈った。
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