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上総は護衛官たちのほうを振り返ってニヤリと笑い、AK47カラシニコフを肩から外した。小川を挟んだ向こう岸にずらりと並んだ人型標的のひとつを選ぶ。 ライフルの装填桿を引いた。それから手慣れた動作でライフルを肩付けして素早く照準し、何とも鮮やかな手つきで引き金を引いた。ダダダンッと銃声が轟いて、付近の山鳥が一斉に飛び立った。見事な三点射(バースト)であった。 標的のど真ん中、向かってやや右に寄った心臓の辺りに、風穴が三つ、重なり合いながら空いている。 「お見事な腕前です!」 護衛官たちがサングラスで覆われた目を輝かせ、一斉に手を打ち鳴らした。 「拳銃射撃に関しては昔から自信があったのだ。ライフル射撃は最近おぼえた。これは頑丈さが取り柄の旧ソ連製だが、撃ってみると案外面白いものだな」 上総は安全装置を作動させたAK47を、再び肩にかけた。 「だがこっちのほうはもっと面白いぞ。よく見ていろ」 上総は向こう岸に並んだ人型標的を真っ直ぐ見据え、一喝した。 「おりゃっ!」 人の型をした標的が、念動波を受けて次から次へと爆発飛散してゆく。半分ほどを爆発させた後、残りの十体ほどの標的がふわりふわりと空中に舞い上がった。 「見ていろ、これが念動力というものだ」 十体あまりの人型標的が、まるでロケットのように空高くへと舞い上がってゆく。人型標的はやがて小さな点となり、ついには雲間に隠れて見えなくなった。 「閣下、標的は何処へ?」 サングラスを外した護衛官らが、眩しげに目を細めながら空の彼方を見上げている。 「さあな。太平洋のどこかの無人島に向けて飛ばしてやった。逆も出来るぞ」 「逆と言いますと?」 護衛官たちが不思議そうな顔で上総を見ている。 「まあ、見ていろ」 上総は精神を統一した。 東の空の彼方から、ラグビーのボールぐらいの大きさの物体が飛来して来た。上総はそれを両手でキャッチして、すかさず護衛官たちに向けて放った。護衛官の隊長がドッジボールのように身体で受け止めた。物体はかつて見たこともないような不思議な形をしている。 「こ、これは?」 「南洋の島の果物だろうな。割ってみろ」 「はあ」 訝しげに首を捻りながら、護衛官たちは手頃な石を見つけて果物を叩きつけ、半分に割った。果実の芳醇な香りが風に乗って辺りに漂った。 「おおっ。いい匂い」 護衛官たちは色めき立った。 「食べられそうです!」 「ようし。試しに食ってみよう」 名前も知らぬ不思議な果物を当分して全員で食べてみた。美味であった。 「これは美味い。いやあ愉快、愉快」 上総は上体を仰け反らせて高笑いした。
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