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「だから今日、ちゃんと別れてきました」 まるで「ちゃんと朝ごはん食べてきたよ」とでも伝えるような軽い口調である。自然なのか、繕ったそれなのかはわからないが、瞳に濁りはない。 半田は、相槌を打つタイミングを失った。 「すいません。計画立てようなんて言っておきながら、抜け駆けしちゃって。でも、もうなんか無理で……」 ずっと、半田さんのことしか考えられなくて。 掠れた声を肩にぶつけながら、彼は再び寄りかかってきた。 ——昼に果乃と会ったのは、別れ話をするためだったらしい。そんな話をされると思っていない彼女は、呑気に運ばれてきたパスタを写真に撮ったりしていた。 しかし、いざ食事を始めてしまったら、なんとなく言いそびれてしまうのではと危惧した陣内は、彼女がフォークを持ったタイミングで「好きな人ができたから別れてほしい」と告げた。 泣かれはしなかったが、雰囲気は一様にして険悪になり、ともにパスタに口をつけることのないまま、1時間以上、沈黙を決め込んだ。 それから、フードサンプルの蝋のように綺麗に固まったパスタを残して、彼女から先に席を立ったというのだ。 「それ話したの、何時?」 そこまで聞いて、半田は思わず口にしていた。 「店に入ったのが12時だったから、12時半ぐらいかな。どうしてですか?」 半田はポケットからスマートフォンを取り出し、果乃に宛てたメッセージの履歴を確認した。 送信時間は12時32分になっている。 なんということだ。 言葉を唇で噛み潰していると、陣内が眉をひそめた。
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