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「どうしたんですか」
「いや、俺も同じだったから……」
「同じって?」
「気持ちをはっきり自覚してさ。ちゃんとしなきゃだめだなって。俺もちょうどその時間に、同じ内容を果乃に送った」
昼に見たあの投稿が決定打となり、半田を動かしたのだった。
メッセージ画面を陣内に向けると、彼は数回、目を瞬かせた。
「好きな人ができたから、別れてほしいって」
「果乃はなんて?」
「わかったーみたいな感じで、あっさり終わったよ」
彼女が半田からのメッセージを読んだのは、陣内と別れた直後だろう。
ただ、自分とのほうは、おそらく終わりを予感していたに違いない。
発覚したあの日から随分とよそよそしい態度を取っていたし、最近では会うことはおろか、直接声を聞くこともなかった。
2日に1回程度の挨拶だけで繋がっていたのである。
「計画立てようとか言って、そのままになってたけど——結果的に、偶然、プランCになったわけだ」
陣内がつぶやいたひと言に、半田はうまく反応できなかった。
「プランC?」
「ふたりいっぺんに、同じ理由で別れ話するっていうさ……」
たしかに、インパクトは絶大だろう。しかし、決して後味がいいものではない。
まぁ、どんな恋愛であれ、終わりに旨味があるはずもないのだが———
「あー、でもよかった。お互い、きちんと終わってたんですね」
それから陣内は両手を握ってくる。
今度はもう、遠慮も躊躇もなかった。
「俺も自分に驚いてる」
「いつからですか?」
考えかけたが、首を傾げた。
「最初からだと思うよ」
自覚なき感情が、回数を重ねるうちにグラデーションのように濃くなっていったとしか言いようがない。
「一緒だ」
陣内も嬉しそうに続いた。
それから、柔らかい彼の唇がつむじや額、頬に落とされ、やがて唇にまで到達する。
音を立てて小刻みに繰り返されるうち、ぼんやりとのぼせた。
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