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「でも、実は俺、前から半田さんのこと知ってたんですよ」
いったん離れた唇をまたすぐに追うと、彼に言葉を挟まれた。
驚きはしたが、感情はすっかりとろけていて、波を立てる俊敏さを失っていた。
「どうして知ってたの」
返事をし、すぐに唇を塞ぐ。彼はリアクションの薄い半田にやや驚いたようだった。
「大学の入試の日、試験終えて吉津さんのカフェに寄ったんです。その時、半田さんが接客してくれたの。覚えてない?」
「うーん、覚えてるような、ないような……」
吉津のカフェは、F大生がよく訪れる。
接客を通して彼らと会話をすることも多かったせいか、細かい記憶はなかった。
「今日が入試だったって言ったら、お疲れさまって、クッキーをサービスで出してくれたんです。合格するといいねとか、したらまた教えてねって言ってくれて」
「で、合格したんだよね?」
「しましたよ。律儀に報告しに行ったら、半田さんはいなくて。入学してからも何回か行ったけどやっぱりいないから、思い切ってバイトしてみたら、入れ違いで辞めてたって知ったんです」
彼の体に両手を回してみると、胴回りの太さや、皮膚の硬さに驚く。
体温は自分よりもだいぶ高そうだ。シャツ越しに、うっすらと汗をかいているのがわかる。
「でもまさか、こんな形で再会するとは思わなんだ」
「再会の自覚がなくて、すみませんでした……」
いーよ、とからりと笑う。
そのさっぱりとした感じ。きもちよく乾いた喋り方。豊穣さ——————
「半田さん」
それから、キスと同時に、パンツのウエストゴムに、指をねじ込まれた。
半田はどうしたらいいか戸惑い、とりあえず彼の背中に手を回して委ねた。
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