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振り返ると、果乃との仲は、決して不和ではなかった。
ふたりの間に起きた諍いといえば、年末の旅行を北海道にするか、それとも沖縄にするかぐらいの、ごく小さなものだ。
彼女とは3日前に会ったばかりだし、毎日、連絡も取り合っている。
疑う余地などなかった。絆は見えないだけで、確かにそこにあると、半田は思い込んでいた。
震え、怒り、疑い。
それらに途端に押しつぶされそうになり、半田は自宅の狭いワンルームの中を行ったり来たりしながら、乱れる呼吸をどうにか落ち着けようとした。
ビールの缶を開けて流し入れることで、なんとか押し殺す。
それから熱いシャワーを浴び、丁寧に歯を磨いた。
一旦冷静になると、次第に変な活力がみなぎってきた。
数日に一度チェックする程度のSNSをくまなくチェックし、陣内とやらのアカウントを見つけだしたのだった。
果乃と陣内の投稿を照らし合わせてみると、決定的な記述はないものの、訪れた場所や食べたものなどがいくつか一致していた。
また、動向を探ったかぎりでは、ふたりの関係が始まったのは、どうも半年前かららしい。
そこまで推測して、半田はふと我に返った。
こそこそ嗅ぎ回ってみじめな思いをするぐらいなら、いっそのことはっきりさせてしまおう。
意を決して、陣内にダイレクトメッセージを送ったのが、つい3日前のことだ。
そして今、彼とこうして向き合っている。
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