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「俺って、浮気相手だったのかー……」 陣内はアイスティーをストローで啜りながら、椅子の背もたれに腕を掛けた。 木の軋む、みしりという音が響く。 口調は相変わらず一本調子で、悲哀も怒りめいたものも感じられない。 「すでに半年続いてるなら、きっと浮気じゃなくて本気だよ」 半田はコーヒーカップの取っ手に人差し指を引っ掛け、意味もなくカップを半回転させた。 「でも、半田さんとは俺よりも長く付き合ってるわけですし」 「長さは関係ないよ。俺とはそのうち終わらせるつもりだったんじゃないかな」 「どうしてですか?」 陣内から、例の養生テープじみた視線を感じて、半田は下を向いた。 「なんとなく」 半田は相槌を打つと、カップに口をつけた。 曖昧だが、率直な意見だ。 なにがどうとは言えないが、とにかく自分は、この男に、全面的に負けている。 最初に店に入ってきた瞬間から、ずっと思っていたことだった。 「しかし、よくもまぁ気づかずにここまできたなぁ。普通、SNSとかでバレそうなもんですけど」 大胆なことに、果乃は半田と陣内、ふたりをフォローしていた。 「俺があまりSNSに関心ないから、バレないと思ったんじゃないかな」 「それ、俺もだ。いやー、舐められてんなー」 彼は画面をスクロールしながら、にやにやと笑っている。まるでこの状況を楽しんでいるかのようだ。 ——事実は、半田の見立てと概ね一致していた。 陣内はカフェのすぐ近くにあるF大に通う学生で、半田が辞めたすぐ後に、アルバイトとして入った。 果乃とはシフトが被ることも多く、徐々に親しくなっていったそうだ。 ちょうど半年前、彼女がカフェのバイトを辞めるタイミングで告白されたらしい。 果乃に対して何の疑いももつことなく、これまで普通にお付き合いしてきたそうだ。
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