次いつやるか決めた?

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蓮はうなだれていた。 夕食を食べ終わり、ゴロゴロと居間で時間を潰しているのだ。 今頃、本来なら友達とエロ本探しに行っているはずなのだが、宗一が抜けたことで計画もなんとなくおじゃんになったのだ。 それを聞いた蓮は希望を喪失した。 宗一を恨む気持ちはないが、燃え切らない欲望の行き場を失ったのだ。 少しでも発散するために、蓮は部活動に力を入れた。 昨日とは見違えるほどの気迫と動きに、コーチは褒めてくれたがそんなことでは蓮の気持ちは収まらない。 どうしたものかと、行き場を無くした心情を持て余しながら蓮はぐったりと体を横に倒しているのだ。 「部活はどうだった?」 「……え?」 焼酎を飲んでいる父が話しかけてくる。 蓮は寝転がったままだらしない口調で答える。 「疲れたよ……」 「そうか、まあ強くなるなら当然だな」 蓮の父親もこの島の人間で、バレーボールを神聖視している人間の1人である。 酔うといつも自分がどれだけバレーが上手かったか、エースの自分がどれだけ点をとったかの自慢話になる。 本格的に自慢が始まる前に居間を出ようと蓮はのそのそと立ち上がる。 「今度お父さんが部活に行ってやろうか?」 「来なくていいよ」 蓮は自室に戻り、またベッドにだらだら寝転がった。 ため息を吐く、課題もする気が起きない。 「……明日は話せるといいけど……はぁ、まただ」 ぷっくりと蓮の股間が膨らみ始める。 興奮が高まってしまったのだ。 「どうにかしないと……学校でも大きくなったら大変だ」 打開策を考えていると、1つ妙案が蓮の頭に浮かんだ。 電話をすればいいのだ。 蓮は思わず飛び起きる、そしてドアノブに手をかけた。 「……ん、いや待って……」 まだ蓮は冷静な判断力を失っていなかった。 彼女の家に電話をかけるということの意味を思い出す。 彼女もスマホは持っていないはず、そうなれば彼女が住んでいる団地の部屋の電話番号にかけることになる。 そしてその部屋には夏澄だけではなく、彼女の父親……男子バレー部コーチの雄大がいるのだ。 「うっ……雄大さんとは話したくないな」 何が悲しくて部活が終わった夜に怖いコーチと話さなくてはいけないのか……。 蓮は悩んだ、自分の股間を見下ろすと股間は今だ膨らんでいる。 人生経験の浅い蓮は解決方法を見出せない。 分からない問題なら大人たち、つまり親に聞けば大概のことは解決してきたがこればかりは聞くことが出来ない。 「幼馴染の夏澄ちゃんともう1度セックスしたいんだ、どうしたらいいんだろうお父さん」なんて聞けば絶対に説教されて、責任を取るためにコーチのもとに連れて行かれる。 そして怖いコーチの雄大にボコボコにされるだろう。 それは流石の蓮も嫌だった。 トントンと足で床を叩いて、頭を悩ます。 雄大とは話したくないが、どうしても夏澄とは話したい。 このモヤモヤした気持ちを霧散させてくれるのは彼女だけだからだ。 「ふぅ……」 蓮は深呼吸をして、頭を少しでも軽くした。 そして考えを固める。 このあやふやな心情と考え方がダメなのだと気付く。 セックスが出来ないなら出来ないと、事実を知る必要がある。 出来ないと分かっても、そのときは諦めもつくし今後自分がどう行動すればいいか指標が立てられるかもしれない。 とにかく彼女と話すことは今後の心の健康のためにも必要不可欠なのだ。 「……よし」 蓮は臍を固める。 これは自分にとって重大な問題だと再確認する。 揺れ動く思春期の男子は、初めて自分の意志で困難から逃げないと決めた。 足音を鳴らし、居間に戻る。 そして固定電話の子機を手に取り、そばに置いてある紙に目を通した。 ここには縁のある人間の電話番号が書いてある。 「誰に電話だ?」 「宗一くん」 父からの質問に嘘を返し、蓮は高坂家への電話番号を入力した。 そして番号を押し終えると、すぐに部屋に戻った。 コール音が彼の動揺を誘う。 心臓と腹部が痛んできた。 「雄大さん出るな、雄大さん出るな、雄大さん出るな……」 何度もその言葉を蓮は繰り返した。 必死に願う思いは神に届くのか? 電話は繋がった。 「はい高坂だ」 電話に出たのは我らが雄大コーチだった。 蓮は奥歯を噛みしめて、顔をしかめる。 「もしもし、誰だ?」 「あっと……夜分にごめんなさい、蓮です」 「おう、なんだ?」 「あの……えっとですね、その夏澄ちゃんに代わってもらえませんでしょうか?」 「夏澄に?どうした?」 「あー、夏澄ちゃんの教科書間違って持って帰ってきちゃったみたいで。謝りたいんですよね。それと……あー、俺が持ってるよってこと伝えたくて……無くなって困ってるかもしれないし」 「ああそうか、俺から言っとくよ」 「いやダメです!こういうのは直接……謝らないと」 「明日謝ればいいだろ、あいつ今部屋にいるし」 「あー、えっと……それとちょっと聞きたいことがあったんですよね」 「何を?」 「俺夏澄ちゃんに勉強教えて貰ってるんですけど、ちょっと分からないところがあって……」 「夏澄に?勉強?」 「はい、夏澄ちゃんすごく勉強教えるのが上手で……だから聞きたいなぁって」 「そうか、わかった。ちょっと呼んでくるから」 保留にもせず雄大は夏澄の部屋に向かった。 電話からはテレビの音が漏れて聞こえてくる。 雄大と1対1で話したことで、ごっそりと蓮の気力が削れていた。
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