次いつやるか決めた?

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「大丈夫?」 「お、脅かさないでよ!」 「別に脅かすつもりはなかったんだけど、で順調?」 「お、折り紙?まあ順調っていうか手もつけてないけど」 「大変だね、毎日結衣ちゃんに躾されて」 「躾って……俺は犬じゃないんだから」 「ふふ、だね。3羽折らなきゃまた怒られるよ」 「うん、早く折らなくちゃ」 蓮は会話を無理やり打ち切って、夏澄からも目を逸らした。 誰よりも夏澄との繋がりを求めているのに、いざ話すとなると逃げたくなる。 公衆の場での触れ合いは蓮は望んでいないのだ。 そんなこと知ってか知らずか、夏澄は話しかけてくる。 「私も手伝ってあげようか?」 「いいって、1人でやるよ」 「そう?遠慮しなくていいのに」 「だいたい俺が折ったのと夏澄ちゃんが折ったのじゃ完成度が違いすぎてすぐにバレるよ」 「それもそっか、ふーん」 教室にいた宗一がトイレに行ったことを確認した夏澄は蓮に耳うちした。 今この場には2人にしかいない、キスしたって許される。 「それで……次いつやるか決めた?」 「え……うん、いやまぁ……」 「決めてないの?」 「いや毎日考えてるよ……そのことは」 「私に夢中なんだ?」 「……うん」 夏澄はクスクスと笑った。 耳たぶを赤くした蓮は、勇気を出して彼女の目を見て会話する。 「俺は……毎日やりたいくらいなんだよ。だから……時間があれば君に会いたい」 「じゃあ今日の夜は?」 「え?いいの?」 「うん」 「夜って言っても……どこで?またトイレ?」 「それでもいいけど、私いい考え思いついたんだよ」 「どんな?」 「部室でやらない?」 「え?」 「あ、戻ってきた。今日の夜、部室で待ってるね」 夏澄はそれだけ言って自分の席に座った。 その数秒後、結衣が教室に戻ってくる。 「蓮くんちゃんと折った?」 「え?ああ……」 「あ!1羽も折ってない!!」 結衣は蓮に詰め寄り、ぷりぷりと怒った。 蓮は曖昧な笑みを返す。 「手の……調子が悪くて。昨日突き指したんだよね」 「え?ほんと?」 「あはは……」 「……嘘だね?」 「うん、嘘……」 「もう!なんですぐに怠けるの!蓮くんの将来が心配だよ!」 「そんなおおげさな……」 「保育園のときから蓮くんは1人じゃなにも出来なかったんだから心配するよ!」 「べ、別に1人でなんにも出来ないってことはないよ……」 「私が手伝わなきゃ服も着れなかったのに!」 「む、昔の話でしょ」 「毎日蓮くんの上着を畳んであげてたのは誰?」 「結衣ちゃんだけど……」 「だらしないのはそう簡単に治らないんだよ!今からちゃんとしておかないと!」 勢いよく話す結衣の口から涎が垂れた。 きらめく唾液が蓮の机に落ちる。 「あ、ごめん……」 「気にしないで」 蓮はポケットからハンカチを取り出して、まず彼女の口を拭いてあげた。 そして自分の机を拭く。 「ごめん……汚いよね」 「いいって別に。気にしてないよ」 「うん、ありがと……」 結衣は蓮から目を逸らして、やや俯いた。 だがその口元は微かに緩んでいる。 「俺もごめんね、ちゃんと鶴を折るよ。6年生のためだもんね」 「分かってくれたらいいの、私も言い過ぎた。ごめんね」 2人は仲睦まじく、「あははうふふ」と笑いあった。 その様子を横目で伺っていた夏澄は、鶴を折りながら誰にも聞こえないように鼻で笑った。
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