私のこと好きになったらダメだよ

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「蓮ちゃん、次の練習試合が終わったら釣り行かない?」 「ええ?練習試合の後?疲れない?」 「いいじゃん。ユウマくんとタケルくんも誘ってさ、行こうぜ!」 「うーん……」 「行かないの?」 「行くけどぉ」 「なんだよ」 5時限目が終わった休み時間、蓮は自分の机に寄りかかっている大和と釣りの予定を話し合っていた。 「宗一くんも来る?」 「あーごめん、夜は外出できないんだよ」 「ああ、そうだったね」 「ごめんね」 「いいっていいって」 「なんとか来られないの?お母さん説得してさ」 「無理っぽいね……最近お母さんうるさいから」 「そっかぁ、じゃあしょうがないね。今度朝練のとき昼から行こうよ」 「うん、ありがとう」 弱弱しく宗一は笑った。 今まで気づかなかったが、蓮はその顔に違和感を覚える。 詳しい話を聞こうと口を開きかけたとき、横から結衣が話に入ってきた。 「釣りに行くの蓮くんたち」 「え?うん、次の土曜日にね」 「私も行っていい?」 「俺はいいけど……ヤマちゃんいい?」 「俺も構わないよ、でも結衣ちゃん釣り出来るの?」 「ううん、やったことない。教えてよ」 「結衣ちゃんやったことないの?」 「うん、だから蓮くん教えてよ」 「それはいいけど、釣り好きが増えてくれたら嬉しいし。でも俺釣り竿1本しか持ってないな。ヤマちゃん貸してあげて」 「うん、いいよ」 「ありがと!」 結衣はニコニコと笑った。 蓮としても釣り仲間が増えるのは嬉しいことだ。 ちらりと彼は夏澄のほうを見る。 彼女は今日出された数学の課題を解いている最中のようだ。 「あ、あの夏澄ちゃん?」 「なに?」 「夏澄ちゃんも釣り……やらない?」 「ごめんね、私釣りに興味ないんだ」 「そ、そう。なら仕方ないね」 「夏澄ちゃんは忙しいんだよ、色々と」 含みを持った言い方で結衣は言った。 蓮はちょっと残念だったが、仕方ない。 やりたくもない人を強引に誘うのはよくないことだと知っている。 「じゃあ俺と蓮ちゃんと結衣ちゃんとユウマくんとタケルくんだね!そうだな……夜8時に港に集合でいい?結衣ちゃんは直接来て、俺竿持ってくから」 「うん、分かった」 「でも楽しみだね、釣りかぁ!」 「あはは、喜びすぎだろ蓮ちゃん」 「ここ数日出来なかったからね、たくさん釣るぞぉ!」 蓮は今活力がみなぎっていた。 夏澄との性交が源となり、勉学も部活も前向きに一生懸命取り組めている。 どんなに辛いことがあろうと、それに見合う褒美があれば人は努力できるのだ。 端的に言えば人生の潮目が変わってきている。 趣味に勉学に苦行にセックス。 蓮の人生は万事良好、順調に進んでいた。
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