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午前が終わり、午後からの試合が始まるまでの休憩時間。
蓮たちは体育館を出た開けた場所で昼食をとっていた。
コンビニで買っておいたそぼろ弁当を蓮は食べる。
レンジでチンなんて出来ないので、冷たいままだ。
汗臭い男たちが一箇所にかたまってもしゃもしゃ冷えた弁当を食べているというのは、みすぼらしいというかむさくるしい光景だ。
みな午前の試合で疲れ切って愉快な話の1つもしない。
無言で自分の飯だけを見つめて、それを口にし咀嚼しているだけである。
「あ、そういえば」
静寂を打ち壊すようにミナトが口を開いた。
気怠そうにみんな彼のほうを見る。
「明日の練習なくなったって」
「え?なんで?」
「雄大さん用事あるってよ、漁協の仕事の」
「え?マジ?」
その事実を知り、部員たちは喜んだ。
月曜日から日曜日まで毎日部活の練習がある。
久しぶりの休みにみなの心が躍っている。
「やった!じゃあ今日の試合頑張るか!」
ショウゴはウキウキして言った。
カイリは少し不満気だが、彼女とゆっくり遊ぶことが出来ると考え彼も機嫌がよくなる。
休みという甘い言葉に、みなの活力も戻っていく。
陰気な雰囲気はなくなり、部員一同饒舌になった。
「明日みんなで野球しようぜ」
ミナトは食べ終わった弁当を片付けながら言った。
その提案にタケルが口を挟む。
「カードゲームだろ、みんなで誰かの家に集まってさ」
「それはいいな」
「おぉい、野球やるっつってんだろ」
「じゃあカードした後に野球でいいだろ」
「まあそれならいいよ、いつものグランドに集合な」
「俺は無理だ」
カイリがきっぱりと断った。
ミナトはうんざりした眼で彼を睨む。
「また彼女か?」
「ああ、まりなと会わないと」
「またかよ、お前がいないと人足りないんだよ!」
「りょうくんでも誘えよ」
「俺あの人嫌いなんだよ、キモイしな」
「あはは、そんなこと知らねぇ」
さも愉快気にカイリは笑った。
ミナトは仏頂面でまだカイリを睨みつけている。
「1年も早く彼女作れよ、あはは」
彼女というワードが出て、宗一と大和は少しそわそわする。
蓮を除いた1年の宗一と大和は女性には縁がないからだ。
蓮はのんきにアカネの顔を思い出す。
彼女と付き合えたらという妄想を膨らませる。
「セックスはいいぞ!さっさと体験しとけ!」
カイリはにやにやと3人の顔を1人ずつ見回した。
蓮以外の2人は思わず俯く。
「お前ら好きな人いないのかよ、言ってみろ」
しつこくプライベートなことを問い詰めてくるカイリに対して、3人は黙秘を貫いた。
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