私のこと好きになったらダメだよ

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草木が伸び放題の緑色の広いグランド。 蓮たちはここに集まっていた。 タケルの家でカードゲームをたっぷり楽しんだ後、ミナトの要望でもある野球をしに来たのである。 カイリは来ていないのでこの場には7人しかいない。 肩慣らしのためキャッチボールを行なう蓮は、相手のユウマの球をグローブで受け止めた。 「蓮、昨日はどうだったんだ?」 「ん?何が?」 蓮はボールを投げ返す、そしてまたユウマも投げる。 会話を続けながら、それを繰り返した。 「結衣だよ」 「ああ、結衣ちゃんがどうしたの?」 「ちゃんと教えてやった?」 「うん、結衣ちゃん何匹も釣って楽しいって言ってた」 「そっか、でどうなんだ?」 「何が?」 「お前あいつと付き合ってないのかよ?」 「ええ?付き合ってないよ。どうしてそう思うの?」 「いや、なんかいい雰囲気だったから」 「そんなことないよ、それに……俺はモテたりしないよ」 「そうか?お前はけっこういい線いってると思うけどな」 「ほんと?」 「お前優しいし」 「ユウマくんのほうが優しいよ」 「ははっ!ありがとな。まあお前のよさが分かるやつはこの島にはいないさ。外に行けば女子もたくさんいる。そのときになったらモテるよ」 「ふふ、そうだといいんだけどね」 「ああ、それよりもうすぐ夏休みだろ?部活が休みのとき釣りにいかないか?」 「うん、行きたい」 「親父が船出して釣り行こうって」 「本当!?行きたい行きたい!」 蓮の父親は漁師ではなく、島の外で運送業を行なっている。 だから船は持っていないので、蓮は漁船に乗ったことがなかった。 「船の上から釣りなんて初めてだよ」 「おう、楽しみにしとけ」 そうこう話していると、ミナトから「試合するぞ!」と呼びかけられた。 みんな集まってじゃんけんでチームを分ける。 そして3人と4人で分かれた。 人数も少ないので2ベース制での試合となる。 キャッチャーは人数が多いほうが出すことになる。 蓮とタケルと宗一が同じチームとなった。 「じゃあ宗一から打てよ」 「分かった」 宗一はバッターボックスに立った。 ミナトがピッチャーで、ボールを投げるために振りかぶる。 そして勢いよく投げた。 宗一はバットを振ったが空振りし、ストライクとなる。 「宗一くん頑張って」 「うん」 第2球目のボールを宗一は見事にとらえた。 小気味よい音がなってボールがライトに飛んでいく。 ボールは地面に落ちてコロコロと転がる。 「宗一くん走って!」 「いいぞ宗一走れ!!」 蓮とタケルの応援を聞き、宗一はがむしゃらに走った。 素早く落ちたボールを利き手で拾ったショウゴが力強く投げる。 1塁に立っていたユウマはきっちりキャッチしたが、その前に宗一は塁を踏んでいた。 「おおい!もっと早く投げろよ!」 「わかってるよ」 1塁を踏まれてややご機嫌斜めなミナトは、バッターボックスを睨みつけた。 打者はタケルだ、金属バットを持ち構えて球を待っている。 ミナトはイライラを握った球に込めて、乱暴に強く投げた。 見事なまでにキャッチャーのもとにボールは投げられず、タケルに目掛けて飛んでいった。 タケルはなんとか避けて、ミナトのほうを振り向く。 「ふざけんな!ちゃんと投げろ!」 「うるせぇよ!黙れ!」 キャッチャーの大和がミナトに返球した。 受け取ったミナトはまた怒りを込めてボールを投げる。 ボールはタケルの肩を直撃した。 タケルはぶちぎれてバットを持ったままミナトに向かって駆ける。 ミナトは急いで後ろに走って逃げた。 「てめぇ!ふざけんなゴラ!殺してやる!!」 広いグランドの中を2人は走り回った。 距離を詰めたところでタケルは握っていたバットをミナトの頭に投げつける。 運よくミナトは身を屈ませて避けて、また逃走を続ける。 数分かかって走って息が切れたミナトにタケルは後ろから襲い掛かった。 地面に倒して何発も顔を殴る。 ミナトも負けじとタケルを攻撃する。 蓮たちは喧嘩を止めるために、急いで駆け寄りタケルの体を拘束した。 「離せっ!こいつ殺してやる!」 「やってみろボケ!!」 興奮しきった2人はまわりの人間を殴りながらも決して喧嘩をやめようとしない。 熱が収まるまで10分ほどかかったが、この場にいる全員どこかしらに痣が出来てしまった。
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