やっと人間らしい顔になった

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「今日の雄大さん……おかしくなかった?」 「うん……」 「それにミナトくんもおかしかったよ」 「あの人はいつもあんな感じじゃない?」 部活が終わって、蓮たち1年3人は帰り道を歩いていた。 厳しい練習で疲れている体で、トボトボと自宅を目指す。 「大丈夫だった宗一くん?ミナトくんに色々ひどいこと言われてたけど……」 「うん……まあ、もう慣れたよ」 宗一は明らかに気分が沈んでいる。 蓮は同情から宗一の肩を叩いた。 ミスを犯すと興奮したミナトから散々罵倒されたのだ。 コーチはその様子を咎めることもしなかった。 なので宗一は黙って彼の暴言を耐えたのだ。 「宗一くん……本当に平気?」 「大丈夫、僕は大丈夫だよ」 「そっか……」 「蓮ちゃんも平気なの?」 「なにが?」 「ミナトくんに……アカネちゃんのことばらされたみたいだし」 「ああ……そうだね」 蓮は呆けた返事をした。 ユウマのことと宗一のことが気になって、アカネが好きなことをばらされたことなど頭に浮かんですらいなかったのだ。 別に心も痛まない、もう彼女のことを好きでもないから。 「気にしてないよ、そういう人だって分かってるし」 「でもミナトくん言いふらすよ?」 「いいよ別に」 「蓮ちゃんがそう言うなら……いいけど」 「それより雄大さんだよ、なんか……ユウマくんにだけ当たりが強かったよね?」 「うん……なんでだろうね」 「別に怒らせるようなミスもしてないのに……不思議だね」 3人とも同時に首をひねった。 優しい人間が痛めつけられる光景を見て、心が痛まない人間はいない。 だがどんなに考えても、納得のいく答えが出なかった。 「機嫌が悪かったのかなぁ、雄大さん」 「そうだとしたらやめてほしいよね。雄大さんの機嫌とか俺たちには関係ないし」 「うん……大会が近いからってのもあるんだろうけど酷いよ」 「そうだ、1回家に帰ったらユウマくんの家に行ってみない?」 「いいね、そうしよう」 「僕も行くよ。釣りしない?」 「おっ、それがいいね!ユウマくん落ち込んでないといいけどなぁ」 蓮たちの雰囲気が明るくなった。 こんな日もある、そう割り切って彼らは歩く。 明るい空の下で釣り糸を海に垂らしていれば、悩みなんてどうでもよくなる。 蓮はそう思っていた、子供の頃からずっと……。 夏澄に言われたことも思い出す。 我慢という言葉を。 我慢して耐えていれば、大抵のことは乗り越えられるのかな? なんて考えながら、蓮は土を踏んで家を目指すのだ。
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