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「ん?何が?」
「今日もパパに殴られてた」
「ああ……いつものことだよ。今日はツーメンのときに1回。サーブカットで1回。合計2回だね、少ない方だよ」
「ツーメンのとき……私見てたから殴られたんでしょ?」
「え?なんで知ってるの?」
「知ってるよ」
そう言ってクスクスと笑う夏澄に、蓮は本気で驚いた。
「なんで……俺と夏澄ちゃん目とか合ってないよね?」
「目が合わなくたって分かるよ」
「……夏澄ちゃんは目が3つあるの?」
「ふふ、無いに決まってるでしょ。でもそうだね……男子よりは女子のほうが目を最大限使って見てるってことかな?」
「へえそうなんだ……知らなかった」
「納得しないでよ」
「ん?どういうこと?」
「もういいよ」
夏澄はまたクスクスと笑った。
頭の上にクエスチョンマークを浮かべた蓮の腹が「ぐう」と鳴る。
「お腹空いてるの?」
「うん、まあね」
「お昼食べてないの?」
「うん」
「どうして?」
「出来るだけ早く来た方がいいかなと思って」
「もう食べてきなよ。しょうがないな、お菓子食べる?」
「悪いよそんなの」
「ちょっと待ってて」
夏澄はソファーを離れて、固定電話のもとに向かった。
受話器を取り上げて、番号を押す。
「パパ?ごめん、棚のお菓子食べていい?……うん、分かった。ありがとう」
夏澄は電話を切って、キッチンの棚を漁った。
そしてスナック菓子とチョコレートをテーブルの上に置く。
「これ食べて」
「いいの?」
「うん」
「ありがとう」
テーブルに移動した蓮は椅子に座って、皿に出されたお菓子を口にする。
気分も落ち着いてきたこともあり、彼の胃は空腹を訴えていた。
パクパクとお菓子を食べ進める。
「ジュースのほうがいい?」
「いいよ、お茶で」
「そう」
夏澄も椅子に座って、蓮と向かい合った。
一緒にお菓子を指でつまむ。
「美味しい?」
「うん、おいしいよ」
「そう、よかった」
夢中でお菓子を頬張る蓮を、夏澄は優しい眼で見つめた。
彼がその視線に気づくことはない。
全てを食べ終えた蓮と夏澄はゴミを片付けて、洗面所で手を洗った。
「お腹いっぱい?」
「うん」
「じゃあ私の部屋に行こっか」
「え?」
夏澄は蓮の手を引いた。
今までろくに触れたこともない柔らかな手……。
穏やかだった心中が、部屋に上がったときの緊張に戻る。
夏澄は何も言わずに彼の手を引っ張る。
自室の扉を開けて、蓮をベッドに座らせた。
部屋の中は飾り付けられていて、甘い匂いがした。
思春期を迎えて初めて訪れる女の子の部屋。
キョロキョロと落ち着きなく蓮は夏澄の部屋を観察する。
当然のように蓮の隣に座った夏澄は、その肩に頭を乗せた。
初めて感じる重量に、蓮の体温が上がっていく。
「緊張してる?」
「うん……緊張してる」
「素直だね」
「そ、そうかな……?」
「どうする?やめてもいいんだよ?」
夏澄は脚を伸ばした。
蓮と同じ運動用の短パンから伸びる長い足の指が何度も折り曲げられる。
夏澄は顔の距離を近づけてきた、小さな温かい吐息が蓮にぶつかる。
「……夏澄ちゃんは俺のこと好きなの?」
「昨日も言ったけど好きじゃない。蓮くんと付き合う気もないよ?でもセックスしたい……で?やる?」
「……いいのかな?そういうの……あんまりよくないよ」
「だね、で?やるの?」
自身の股間に触れた手に、蓮は目を見開いた。
彼女の手で揉まれるたびに、股間がどんどん膨らんでいく。
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