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第一話 : 嵐のごとく
季節は桜が咲き乱れる四月。
そんな麗らかな季節とは異なり、只今立花家は過去最大に荒れている。
なぜなら、私の三つ上の姉が突然夕食時にとんでもない発言をしたから。
「ねぇ、お父さんと心春。私、結婚することにした」
「ブホッ!はぁ?突然何を言い出すんだ、未知」
「ちょっとお父さん、味噌汁飛ばさないでよー!何もそんなに驚くことじゃないでしょ。私もいい年なの」
「お、お、お姉ちゃん、それ本気?」
この反応は、何も私たちが大袈裟に驚いているのではない。
私の姉は今までダメンズほいほいで、嫌と言うほど男に泣かされては今みたいに実家に出戻りすることを繰り返してきた。
確かに姉は美人だし愛嬌もあるが、世の中の一般的な長女像とは異なり、やたらと自由奔放だ。
そんな姉の極めつけは、この発言だった。
「私、妊娠したのよね」
「に、に、妊娠って、おまっ、えぇ!?」
「お、お、お父さん、落ち着いてっ」
「何て事だ。もう父さんは母さんに合わせる顔がない…」
「そんな、お父さん気をしっかり持って!」
私と父で食事の手を止めて互いに声をかけあっていれば、当の姉は他人事のように笑っている。
「もう、二人とも落ち着いてよ」
「落ち着いてなんかいられるか!あぁ~、手塩にかけて育てた娘を、こんな形でよくわからんやつにぃー!」
父は横で頭を抱えて、椅子の背もたれに寄りかかった。
「お父さん、しっかりして。ほら、お茶でも飲んで」
「おぉ、悪いな、心春…って苦っ!?なんだ、このお茶は!」
「あ、それ、今日は心春じゃなくて私が淹れてあげたの~!お父さんは濃い目が好きかなって思って、茶葉を多めにしたんだ」
父は呆れたように再び頭を抱えて、テーブルに肘をつけてうなだれる。
この通り我が姉は物凄く家事力が低く、その点が今までの恋人にさよならを告げられた原因の一つにもなっていると思う。
しかし本人は気にすることもなく、どこ吹く風でテレビを見て笑いながらハンバーグを頬張っていた。
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