13人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
いつもと同じように、リビングの机でひとり業務用パソコンを開いて在宅勤務。
ないのは康二との会話だけ。
『15時近所の発熱外来予約取れた。歩いて行ってくる。未央も念のためマスクして過ごして。あと1時間毎に換気』
『了解。マスクして極力リビングで過ごすようにするから。換気もやっておくね』
『お昼ごはん食べれそう?』
『スポドリ1本追加で持ってきてもらえると助かる』
『発熱外来行ってくる』
『行ってらっしゃい。気をつけて』
玄関のドアを開く音は聞こえるのに、顔を見て直接伝えられないことが、こんなにも寂しいなんて。
『ただいま』
『おかえり。夕ごはんどうする?』
『解熱鎮痛剤処方されたから、朝の残りご飯と味噌汁だけ寝室で食べるよ』
『わかった。19時にお盆に乗せて寝室のドアの外に置いておく。他にも欲しいものあったら言ってね』
『ありがとう』
『検査結果わかるの早くて明後日だけど、今日から別々に寝てできるだけ接触しないようにしよう。万が一コロナだったとして、未央にまでうつしたくないし』
自分が一番しんどいはずなのに、未央のことを思いやってくれる康二。
その優しさに、胸がきゅっと締めつけられる。
『私は今のところ大丈夫。とりあえず今日からリビングのソファで寝るね』
康二は寝室、未央はリビング。
この日がふたりの隔離生活の始まり。
そして翌日、康二から送られてきたLINEには、こう記されていた。
『病院から検査結果の連絡あり、コロナ陽性。自宅療養期間は発症日から7日間』
『ワクチン打ったのにな……未央も巻きこんでごめん』
最初のコメントを投稿しよう!