エピローグ:寄せ書きの落書き

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エピローグ:寄せ書きの落書き

 ――夏休みに入ったある日。  私は家で部屋を掃除していた。今日は宮岡が家に来ることになっている。  なぜか出社予定だったパパが今日もテレワークになったらしく、リビングにどんと構えているけど、正直邪魔だなあ。 ****  宮岡は元野球部らしく、腰の入った挨拶でパパに面通りすると、爽やかに私の部屋まで歩いて来た。メンタルの強い男だ。  そしてしばらく話した後、こう言った。 「卒アル、あれ直させてよ」 「ええー、ロスト・アングル気に入ってるんだけど」 「俺はキツいんだって、ね、いいでしょ?」  私はしぶしぶ、寄せ書きのページを開いて渡す。  宮岡はどこから出したのか、既に青色のペンを構えていた。  ――『Lost Angle(笑)  宮岡』 「……本当に間違ってやんの、こいつ」 「いや、あんたでしょ」  宮岡は照れ笑いすると、すぐさま『(笑)』を斜線で消した。  そして『le』も同じように消すと、上に『el』と書き加えた。  これで視野の外から天使が現れた訳だ。  ……と、これで終わりかと思ったら、宮岡は『Lost』の方にもペンを近づけていく。なにをするつもりだろう? 「……これでよし!」  私は宮岡の書き直した文に目を走らせる。『Lost』の『o』の部分に尻尾のような線が付け加えられていた。これで完成したのは――。  ――『Last Angel』  ラスト・エンジェル?  なにを、新たな落書きしてくれてんの宮岡は。 「……俺、もう最後で良い。俺は仲西さんが、最後の人でいい。だから俺にとって最後の天使」  そう言いながら、私を抱きしめた。 「今度は、間違ってないでしょ?」 「うん、間違ってない」  私は宮岡の背中に手をまわして抱き返した。  ――『L』と『E』が違って始まった、この物語。  私も宮岡みたく、上手いこと言って締めてみようかな。  私達の物語はまだまだ続くけど、ひとまずここで一区切り。  『L』から始まって『E』で終わる言葉。  OVで締めくくれて、本当に良かった。  ■□おわり□■
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