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Ⅲ.ロスト・アングルの真意(3/5)
私と宮岡は『おやすみ』を言い合う直前に、会う約束を決めた。
お互いに休みに等しい状態なんだから、今のうちに遊ぼうというのは至極自然な流れだったように思う。
ただし明日は宮岡がバイトだから、明後日の金曜日に会うことになった。
金曜日。
早く来てほしい気持ちと、もうちょい遠ざかってほしい気持ちとがせめぎ合う。たった一日空いていたって特に準備も出来ないし。
どういう感じで行ったらいいのかも分からない。中学時代の私のように、派手に決めていった方がいいのか。
いやでも、それじゃあ宇宙人。宮岡は地球人の方が好意的な感じだった。
じゃあ地球人って、何よ。
今日みたいに身支度10分スタイルで行けばいいってことなの?
それは流石にちょっと……でも、LINE出来るようになったのも、そのスタイルのおかげだったりするんだよな……。
ああ!!! どうすればいいんだろう!!!
私は中々眠れずに、久々に新聞屋のバイクの音を聞いてから寝た。
****
――時は進んで、金曜日のお昼。
船河駅の裏手にある知る人ぞ知る小さな公園、通称『ヘビ公園』。
ヘビみたいにグネグネしている遊具があるから、安直にもヘビ公園。しかしその遊具以外にはベンチと謎の石碑みたいなものがあるだけで、他に特徴がないのも事実。
結果、ここは地元民の駅を避けた待ち合わせスポットとして利用されることが多い。
私と宮岡も例に漏れず、『11:00にヘビ公園でいい?』みたいなやり取りをして、ここに集合することになっている。私は20分前だというのに早くも到着してしまった次第だ。
色々と悩んだ結果、私は最終的にノーメイクに近い格好で来ることを選んだ。まあ眉とかまつ毛とか多少整えてはあるし、薄いファンデくらいはしている。だけどその辺の芸能人もこの程度なら『すっぴん』と言い張るだろう。
服装だってTシャツとショートパンツという、スコール来店時と同じような組み合わせだ。一応お気に入りのダボTとデニムパンツに換装しているし、前回よりは上位互換、垢抜けて見える……はず。
私がこうした『前回会った時ライク』な装いとした背景は、やはり地球人というワードが多分に響いている。その方が宮岡好みであると考えるほうが自然だし、ここでバチバチに着飾って宇宙人認定されて距離を置かれても悲しい。
だったら前回をベースにすべきだと思い至ったのだ。そりゃあ他のJK達と比較すれば地味な方に入ってしまうだろうが、別にそれでいい。
私は不特定多数に評価されたい訳ではない。気に入ってもらいたい相手は1人しかいないのだから。
程なくして、その相手がやってきた。
ダボッとしたシルエットのTシャツとパンツに身を包みながらも、すっきりと爽やかに見える。こういう着こなしが出来る人はもれなくかっこいい人だ。
こういう人に対して、韓国ならばユニークな二つ名でもつくのだろう。『万人の初恋』みたいな。
前回会った時のコックコートも良かったけど、私服もまた違った良さがある。男子はシンプルな方が好きっていう私みたいな人には効果バツグンだ。
宮岡はヘビ公園の入り口あたりで私に気付くと、得意の『天才反則微笑』で手を振ってきた。今日は最近の中では涼しい部類に入る気温なのに、私の身体は熱くなってきた。
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