13人が本棚に入れています
本棚に追加
Ⅳ.私達の着地点(2/5)
電車はガタンゴトンと進んでいて、私達はそこに座っている。
近くのお母さんはベビーカーを揺すって子供をあやしたり、サラリーマンはスマホをいじりながら、眠気と闘っていたり。
私と宮岡はといえば、何にもしていない。
会話をしている訳でもなければ、互いに違うことをしている訳でもない。
何もしないをしていて、それがすごく、心地よかった。
電車の揺れがたまに私達の指先を触れ合わせると、その時だけそこに神経が集中する。それ以外は至ってニュートラル。心地良い沈黙。
私は自分の気持がはっきりしたし、すぐにでもそれを伝えたい。
なぜか分からないけど、宮岡も似たようなことを思っていそうな気がする。それが互いに沈黙を許容できている要因なんじゃないかと思う。
しかし人生、そう簡単にはいかない。
いつもそうなんだよね、人生って想像もつかないところから殴ってくる。
――静寂を破ったのは、私でも宮岡でもなく、第三者だった。
それも、知らない人間でもなかったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!