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Ⅳ.私達の着地点(3/5)
「――あれ、宮岡じゃーん」
隣の車輌から歩いてきた制服姿の女。それも私と同じ船南の制服。
黒髪ロングを束ねたヘアスタイルで、ポイントの金のエクステが映えている。すっきりした色白の顔は、少しキツめだけど美人だ。そしてミニスカートから伸びる綺麗な足。女の私でも目が行ってしまう。
私は、この女を知っている。
「あ、富川」
宮岡がそっけなく答えた。呼び捨てなんだ、綾音には。
何を隠そう、この華のある女も私と宮岡の中学時代の同級生だ。名を富川綾音という。
なんでスッと名前が出てくるかって? それはよく知ってるからだよ。
……正確には、よく知ってたからだよ。
「この間LINEしたの無視したでしょ? ひどくない?」
「ああ、同窓会のやつ? 俺行かないから」
綾音は、宮岡の隣に女子が座っていることを完全に無視して会話を展開している。これは相手を私だと知ってのことか、知らずなのか分からないが、誰だって良い気はしないだろう。
あと謎の同窓会のワードも気になる。だって私には来てない連絡だから。
別にいいんだけど。慣れっこだから。
そこでようやく私の方に目を遣った綾音は、甲高い声を上げた。
「ええ! やだ気付かなかった、トウコちゃんでしょ!? 久しぶりー」
「……彩音、久しぶり」
久しぶりじゃないけどな。この間テストの時も会ってるし。同じ高校なの分かってるはずだろ。普通は同じ高校の人には、言わないんだよ。
「なに2人、なんで一緒にいるわけー」
「この間久々に会ってさ、これから一緒にご飯行くんだ」
宮岡は飄々と返す。その態度に綾音は少し不満そうな表情を浮かべた。
「私が誘った時は来ないのに、なんでトウコちゃんだと行くわけ?」
「いや、俺が誘ったんだよ。仲西さんにご飯行こうって」
「うっそ、何のボランティア精神よ、宮岡って地味な子が好きなの!?」
……相変わらず、言ってくれるよ。
別にいいけどね。中学の頃の、復讐のつもりなんでしょ、きっと。
私はあんたに、何もした覚えはないんだけどね。
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