Ⅰ.再会(1/5)

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Ⅰ.再会(1/5)

 ――夏は暑くて嫌い。  でもクーラーガンガンの部屋から拝見する威勢のいい太陽は悪くない。  ソファーに寝転ぶと、丈短めの部屋着からヘソが出た。このままでは確実にお腹が冷えてやられてしまうだろう。  でもご安心、その部分に猫を乗せると絶妙に温かい。うちの愛猫ヒメモちゃんは昼は無抵抗で可愛い。つまりこの役に最適。夜はちょっとあれだけど。  7月上旬、うちの高校は既にテスト期間を終え、補講期間に入っている。  成績ノーマルかつ部活動のない私は自由登校扱いになっており、当然自由ならば行かないという選択をして、家でゴロゴロしている次第だ。  いっそこのまま夏休みでいいのに。  なんでまたちょろっとだけ学校あるんだろう。不合理だ。  私は身体をくねらせて、ソファーの背もたれに足をかけた。テレビが逆さまに見える暇つぶし。  そんな私に、呆れ返ったような口調で言葉が飛んでくる。 「……トウコ、お前だらけすぎ」 「いいじゃん別に」  在宅勤務中、飲み物を取りに現れたパパだった。  パパは逆さの私を一瞥すると嘆息を漏らし、眉尻あたりを掻いた。 「……天気いいし、出掛けたりしないのか?」 「公園でも行けって? 私高2ですし、ブランコとかしません」 「そうじゃなくて! 友達も休みだろ、買い物とかさ」 「友達いませーん、ごめんなさい陰キャでー」  自分の言葉に合わせてヒメモの手を動かして見せた。結構可愛い。  パパは少し焦った様子で返す。 「いや、そんなことないだろ、中学の頃は遊び回って全然帰って来なかったじゃないか。逆に怒ったくらいだ」 「じゃあさ、どっちがいい? 年中家にいない方がいい?」 「いや……うーん……お前さ、極端なんだよ」  パパは淹れたコーヒーをグラスいっぱいに注ぐと、その言葉と香ばしい匂いを残して去って行った。
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