13人が本棚に入れています
本棚に追加
Ⅰ.再会(1/5)
――夏は暑くて嫌い。
でもクーラーガンガンの部屋から拝見する威勢のいい太陽は悪くない。
ソファーに寝転ぶと、丈短めの部屋着からヘソが出た。このままでは確実にお腹が冷えてやられてしまうだろう。
でもご安心、その部分に猫を乗せると絶妙に温かい。うちの愛猫ヒメモちゃんは昼は無抵抗で可愛い。つまりこの役に最適。夜はちょっとあれだけど。
7月上旬、うちの高校は既にテスト期間を終え、補講期間に入っている。
成績ノーマルかつ部活動のない私は自由登校扱いになっており、当然自由ならば行かないという選択をして、家でゴロゴロしている次第だ。
いっそこのまま夏休みでいいのに。
なんでまたちょろっとだけ学校あるんだろう。不合理だ。
私は身体をくねらせて、ソファーの背もたれに足をかけた。テレビが逆さまに見える暇つぶし。
そんな私に、呆れ返ったような口調で言葉が飛んでくる。
「……トウコ、お前だらけすぎ」
「いいじゃん別に」
在宅勤務中、飲み物を取りに現れたパパだった。
パパは逆さの私を一瞥すると嘆息を漏らし、眉尻あたりを掻いた。
「……天気いいし、出掛けたりしないのか?」
「公園でも行けって? 私高2ですし、ブランコとかしません」
「そうじゃなくて! 友達も休みだろ、買い物とかさ」
「友達いませーん、ごめんなさい陰キャでー」
自分の言葉に合わせてヒメモの手を動かして見せた。結構可愛い。
パパは少し焦った様子で返す。
「いや、そんなことないだろ、中学の頃は遊び回って全然帰って来なかったじゃないか。逆に怒ったくらいだ」
「じゃあさ、どっちがいい? 年中家にいない方がいい?」
「いや……うーん……お前さ、極端なんだよ」
パパは淹れたコーヒーをグラスいっぱいに注ぐと、その言葉と香ばしい匂いを残して去って行った。
最初のコメントを投稿しよう!