Ⅳ.私達の着地点(4/5)

1/1
前へ
/22ページ
次へ

Ⅳ.私達の着地点(4/5)

 中学時代、綾音と私は同じグループにいた。  正確には当時は立場が逆だったし、私は綾音のことなんて対して気にもかけていなかった。私のグループに入ってきたうちの一人、それだけ。  言葉は悪いけど、金魚のフンというか、なんか懐いてくれてるなっていうだけの存在だった。  高校だって私が行くことを確認してから同じ船南にしていたし、服装とかもよく質問されていた。  その関係が大きく変わったのは、高校に入ってすぐのときだ。  高校入学前の春休みで、綾音はすごく綺麗になった。メイクとかも覚えたのだろうし、痩せたのもあると思う。  私は対象的に春休みで若干肥えたくらいの勢いだったから、入学式で一緒に登校した私よりも、綾音に注目が集まるのは必然だった。  それはまあ調子に乗っていた私にとってはショックだったけど、綾音は友達だと思っていたから、嫉妬と同じくらい誇らしい面もあったんだ。本当に。  でも綾音は違ったらしい。  他の高校からも綺麗な子は来ていて、そのメンバー達と付き合うようになった。そして私や中学時代の友人からは離れていった。  それだけならまだしも、私に対して強く当たるようになってきた。聞こえるように嫌味を言ったり、上から目線で話してきたり。  私だって負けたくないと思ったから、体重を元に戻したり、ちょっと小綺麗にしたりしたんだけど、綾音を見返すまでは至らなかった。  次第にそんな生活に疲れてきて、今の自然体、達観した状態に辿り着いた。  ……要するに綾音はね、今『ロスト・アングル』状態なんだ。  私が中学時代にそうだったような、有頂天。  別に責める気はない。私だってそうだったと思うから。  因果応報だって割り切ってるよ。  だから『地味』とか『ボランティア』呼ばわりされたって、私は黙っていた。  でもね。  私の隣に座っていた正直少年は、黙っていられなかったみたい。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加