Ⅱ.地球人と地球人(1/5)

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Ⅱ.地球人と地球人(1/5)

 宮岡は、慣れた感じでカウンターの丸椅子を引くと、ゆっくりと腰を下ろした。座っていても私より結構背が高いのが分かる。 「……ふう」  横からの爆イケ圧にあてられ、私は思わず息を漏らす。隣で宮岡が笑う。 「仲西さん……何か、変わったね」 「……よく言われる」 「昔だったらさ、こう、もっとバーって話してそう」 「……ごめんね、地味になったんです」 「いや、地味とかじゃないんだけど――」  どう考えてもモジモジしている私。宮岡も察しただろう。私はもう日陰で生きていく存在になったのだ。あなたの知っている私じゃないんだ。 「――なんか、嬉しいな」 「……は?」 「いや、こうやって、仲西さんと普通に話せることが」  思わず宮岡の方に顔を向けた私は、激しく後悔した。  どう形容していいか、すごく子供みたいな、純真な笑顔がそこにあったから。私は完全にやられてしまった。 「昔はさ、仲西さん、まるで宇宙人みたいな存在で」 「え、なに、宇宙人?」 「そう宇宙人」 「なんでよ」 「すごく目立ってて、俺なんかと同じ星の人って、思えなかった」  お世辞で言っているとか、おべんちゃらとか、そういう感じではなかった。  普通に単純に、心に浮かんだ言葉を口に出しているだけ。そう見えた。  中学時代の人達からは、表でも裏でも色々言われていたから、私はどこか人の言葉を穿って聞きてしまう癖がついていた。  宮岡の表情と言葉は、そんなことを吹き飛ばしてくれるくらい、まっすぐに飛び込んできてすごく気持ちが良かった。 「地球人だよ……私は」 「今は、確かにそんな気がする。だから嬉しいんだって」 「……私には、今、宮岡が宇宙人に見える……」 「ははは、そんな訳ない。俺は何にも成長してない、地球人のまま」  いや、そんなことないって。  今だってこうやって流暢に喋れているじゃないか。そして反則的なまでの爽やかさで、既に私を撃ち抜いてくれてるじゃないか。  あなたは今や、立派な宇宙人だよ。 「そうかな……」 「うん、だからさ、今は地球人と地球人。会話ができるよ」 「そう……それなら、良かった」  私はスコールに来てから、初めて素直に感情を出せた。その結果私の顔が作ったものは笑顔だった。心なしか私の反応を見た宮岡も嬉しそうだった。  ……なんて思うのは自惚れ過ぎかな。  厨房ではジュージュー熱そうな音が響いている。  膝の上で固く握った私の手も、同じくらいの温度なんじゃなかろうか。
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