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プロローグ:寄せ書きの落書き
――中学生時代は良かった。
何が良かったって、とにかくチヤホヤされていたから。
今思えば、完全に『井の中の蛙』だった訳だけど、当時のカエルちゃんはそんなことは知らない。
ぴょんぴょん大いに暴れていたし、高校に行っても同じように持て囃される気満々だった。
その証拠に見てよ。
中学の卒アル、最後の見開き白ページに、びっしり書かれた寄せ書き。
男子からもたくさん「実は好きでした」的なのがあるでしょ。
ていうか、ほぼほぼ好意的なメッセージで埋め尽くされてるでしょ。
ほんと、一時はこのページ、毎日見てたよね。日課のごとく。
……ただそんな中、一人だけがよく分からないことを書いている。
『Lost Angle(笑) 宮岡』
はあ?
なあに『ロストアングル』って。『(笑)』って……いや笑えないし。
普通に考えてこれ、落書きだよね。宮岡って人の落書きだよね。
英語得意じゃないけど、多分直訳したら……。
『画角を失う』『視点を失う』とかになるのかな?
当時は意味が分からなかった。
何を大切な卒アルに落書きしてくれてんだコイツって思っただけだった。
……でもね。
今の私なら何となく分かる気がしている。これは皮肉なんだ。
私は調子に乗っていたし、それで自分を見失っていた。
コイツは、宮岡は、それを知っていて笑っていたんだろう。
高校二年夏、現在思う。
悔しいけど宮岡は正しかったんだ。
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