気付いてよ

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樹音(じゅね)、頼むっ!」 「はぁ? 何で私なの?」  大学構内の食堂で樹音と向かい合わせに座る(とおる)が、拝むように顔の前で両手を合わせて、縋るような目を向けている。 「あいつだけには絶対負けたくねぇんだよ」 「はぁ?」 「お前がいれば、俺の勝ちだ!」 「何よそれ……」 「勿論ただでとは言わねぇよ」  徹はスマホの画面を樹音に向けて言った。 「えぇっ、取れたの!?」  樹音は徹が握るスマホを両手でガシッと掴み、穴が空くほど凝視した。  間違いない。それは″キングバッファロー″のライブの電子チケットだった。しかも、ライブはもう来週に迫っていた。 「おう。すげぇだろ? めちゃくちゃ頑張ったよ。で、どうする?」 「どうするって――そりゃ引き受けるに決まってるじゃん!」 「よし。交渉成立だな」
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