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初めての任務
新人育成プログラム。
親衛隊の各部門に2名振り分けられ特殊任務が与えられる。
まぁ、任務という名の親睦会のようなものだ。
「隊長のジャン ケインマートだ第2部隊に配属されたものは名乗り前へ」
「スバル・ アーデンブルクだ」
「アルミス ・パラディノアです」
まさか、この2人だったとは。
ジャン「本日の任務は近辺調査だ」
スバル「近辺調査...何も無いじゃないか」
スバルが不機嫌そうに口を開く。
ジャン「口を慎め、任務中は何があるかわからん気を引き締めろ」
アル「隊長、何が調査対象なのか具体的に教えて貰えませんか?」
ご最もな意見だが、それは僕も知りたいところだ。
ジャン「それを探すのも任務だ 」
と言ったものの何も無いと思うが。
焼き払われたこの村に残っている物など、中央広場の噴水ぐらいだった。
当然人の気配など、ありはしない。
僕達の任務はロゼッタ村の調査だった。
そう、人なんていやしない人なんていや…………。
アル「隊長、あそこに人が居ます、私見てきますね」
ジャン「えっ!まって」
スバル「警戒心のない女め」
スバルが呆れた顔で僕を見てきた。
ジャン「まぁ、確かに軽率な行動は、隊の乱れに繋がるかもね!アルには、あとでお仕置だ」
スバル「はぁ、つくづく甘い隊長様だ」
スバルもアルの後を追う。
ジャン「石柱に隠れた人物をこの距離から見つけるとは………」
黙って後を追った。
背中は曲がり杖を付いた男性が噴水を見つめていた。
アル「こんな所で何をしているんですか?」
男性はアル、スバル、僕と順に目を配り、 突然泣き出し僕に近づいてきた。
男「まさか、ジャンか!!ジャン ・ケインマートか帰ってきたのかジャン!」
ジャン「確かに僕はジャン・ケインマート。しかし、すまないボクには記憶がないんだ」
男「そうか、ジャン。記憶をなくしたか......いや記憶を消されたか」
スバル「記憶を消された?このジジイ、何を言っている」
男はこの村のこと、あの日のことを語り始めた。
話が終わろうとする頃。僕は背後から殺気を感じた。
それは一瞬の出来事だった。
矢が男の胸を貫ぬく!!
ジャン「しまった、アル!!」
アルの矢は、鮮やかなスピードで的中した。
肩に描かれたエンブレム。
ベアリムだ!
スバル「速い。しかも正確だ」
ジャン「しっかりしてください」
いくら呼びかけても返事は無かった。聞きたいことが山ほどあったのに。
しかし、拭いきれなかった違和感を払拭するには、十分な情報を与えてくれた。
男の話によると、魔女の指輪の原石がこの村に眠っている。
その原石を代々守っていたのが我々一族なのだと。
この地に眠る魔女の原石。
原石がなんの意味があるのかは、男も知らないらしい。
ただ古くから歌が伝承されており、その歌を歌ってくれた 「魔女の意志は星の意志、恨みの言葉は人の意志、続くや恐れや人の意志。星空見上げて泣くや魔女。」
魔女の強大なエネルギーはこの原石が源だと言うのだ。
ジャン「どうか安らかに。」
スバル「隊長さん」
ジャン「なんだ!」
アル「囲まれてる!」
スバル「やられたな…」
ベアリムが1、2、3…8体も!!
アルが射抜いたベアリムも立ち上がって、9体…。
アル「ちょっと!ベアリムが群れを成すなんて聞いてないわよ。」
スバル「まずいな。3対9か。単なる獣ならまだしも、相手はベアリムだ。噂が本当なら…絶対絶命だ。」
ベアリム1体で小国を壊滅に追い込んだこともあるという。
その強さが本当ならば、この戦いは絶望しかない。
ジャン「ダメじゃないかーアル!急所を1mmでも外せば、ベアリムは復活しちゃうんだ。覚えておきなさい!」
そういうと、ジャンはアルの鼻っ柱をピン!と弾いた。
アル「イタ!あ、すみません。」
スバル「な!何をふざけている!来るぞ!」
すると、ジャンはスっと手を出し俺たちを遮った。
ジャン「はは。新人さんにベアリムの相手は荷が重いよ!」
次の瞬間、1体のベアリムが襲いかかって来た!
アル「あぶな…」
刃が綺麗な弧を描く。
スバル「はやっ…」
刃の軌道は速さを増しさらに弧を描く。
その太刀は全く見えない。
空中でバラバラになったその後から遅れて、けたたましい金属音が聞こえてくる。
ガキキィイイーン!
残り8体のベアリムもバラバラになっていた。
あっという間の出来事だった。
スバル「これが…うるは流………。」
ジャン「さっ、帰ろうか。」
アル「すごい…」
ジャン「はい!いっちょあがりぃー」
スバル「最年少で親衛隊隊長を任されるわけだ…。」
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