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 アヤは何故、ああして俺の前に現れたのだろうか。  事件を暴いてくれる人をずっと待っていたのかもしれない。だから、たまたま空き巣に入った俺を見つけ、話しかけて来たのだろうか。まるで、無人島に漂流した人が、助けを求めて偶然通る貨物船を見つけたように。  そんな上手い例えを言っている場合ではない。あの子に比べたら、俺はまだまだ頑張れる気がする。いや、頑張らなければ、あまりにも贅沢な使い方をした人生を送ることになり、あの子に面目が立たない。 「もう一度、一から始めてみるか――」  外はまだ氷が張る程の寒さだが、一足早く、期待と希望の色をした春風が、俺の気持ちを染めるように吹き抜けた。 空き巣に入ってみたものの おわり
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