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手元のL判サイズの男を見る人が見れば、小綺麗なピンストライプのスーツを身にまとい、爽やかな微笑みをたたえた好青年といった印象を受けるだろう。逆にそれが胡散臭く感じる私の感覚は、性別のハンデがないに等しい職業柄のせいなのか。
”詐欺師”との呼び名が似合う書類上の男と、どんぐり拾いをしている子どものような目で取り調べ室を物珍しそうに眺めて、あっけらかんと「人違いだから」と訴える、襟ぐりの大きくよれたTシャツを気にする様子もない目の前の男が同一人物だなんて、違和感しかない。
もしや、これが男の戦法か。
心理学でいう『ゲインロス効果』。
プラスとマイナスの変化量が大きいほど、人の心に与える影響が大きくなるっていう、あれだ。この期に及んでその効果を狙うとは、根っからの詐欺師気質がそうさせるのか。
てことは、自白を求めるまでもなく、クロ中のクロなのだろう。
「なぁ、女性刑事さん」
「里田です」
「結婚詐欺のことはよくわかんねぇけど、正直に言うとさ、泥棒はしたんだよね」
「あの、それは本件とは別の窃盗罪の自白と捉えて構いませんか」
「ああ、そうだ。たしかに盗みを働いた」
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