懲役14万年

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 突然の自白。しかも、別件ってなによ。  いや、まさか、捜査を撹乱(かくらん)させるための自白じゃないだろうな。 「宇田 雅弘がやった結婚詐欺って、どれくらいの刑罰になるの」 「一般的に詐欺罪で逮捕されたら、十年以下の懲役を科される可能性があります。罰金刑はないので、起訴されて有罪になると、執行猶予がつかなければ、長くて十年間刑務所に収容されることになります」 「へぇ。たったそれだけ」  呆れた。罪を犯した上に開き直りまで。  犯罪を犯す者にも事情はあるだろうが、たいてい想像力が欠如していて、相手の気持ちや自分の立場、状況の先読みができない人物も多い。この男もご多分にもれず、彼らと同様の人間なのだろう。 「それはどういう意味ですか」 「十年なんて一瞬じゃねぇか」 「刑務所の十年は想像以上のものですよ」 「他で聞いた話によると、俺が犯した罪だと、最長でも懲役14万年だってよ」 「いや、懲役14万年って、無期懲役のことですか。あなた、いったい何を盗んだんです」 「コイツの体だよ。いわゆる、人間に()く”憑依(ひょうい)”ってやつだ。宇田 雅弘の魂を亡き者にして完全に乗っ取ってはみたが、どうもしっくりこなくてな。アンタの言う通り、罪は認識して償わなきゃいけねぇな。あの世の法律で裁いてもらう覚悟はできたから、もうこの体は要らねぇわ」
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