#88『夜叉と阿修羅と龍』

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「えーっと、まずこの子達はチャーリー達が拉致されたときとその救出に携わった人なんだよね?」 「えぇ。むしろ恩人とも言えるかもしれません。ディスカリータの方に関しては。淡い記憶の中に残っているんです。私はあの頃、謎のテディベアによって、自我を失いつつあったんです。なので記憶は曖昧ですが…洪と名乗った銀髪で…碧眼の方には見覚えがありまして。悪い人ではないのは確かです。その隣にいた黒髪のお兄さんも。」 「……そっか。じゃぁとりあえずこの子達は、あの時の一件に関わってたわけで…。ディスカリータの人は二人いたってことだよね。」 「…そうですね。それと軍部の司令官が。」 「し…は?司令官?!」 カラニが目を見開いて、大声で尋ねる。オルティスの静かにしろという仕草に咄嗟に口を噤むが、身振り手振りをしながら口をぱくぱくさせる。そしてやっとのことで言葉を絞り出す。 「……なんで?」 「事情聴取だとは言っていました。…大方、ディスカリータの方から情報を得て…この子達を選出した…というところでしょう。」 「…でも…ここまでの状態になるのって、異常事態じゃない?何かやってるでしょ。」 「錯乱薬です。」 「…全然良心的じゃない取り調べだね。司令官、そこそこネジぶっ飛んだ人だね?」 「未然に防ぐことが出来なかったことが悔やまれます。」 「いや…仕方ないんじゃないかな。それにあっちがその〜、そこそこ酷い手段をとったならどうにでも出来るでしょ?ていうか、サナーレさんいないの?」 「ディスカリータの方の名前を出したら、切羽詰まった様子で出て行かれましたよ。」 「……え?ディスカリータに知り合いいるのアノ人。」 「…おそらく同世代の異名持ちでしょう。」 「異名持ちなのアノ人!?」 「あぁ…そうでした。見たこと無かったですよね。サナーレさん、私たちと一緒に拉致された時に、ディスカリータの施設の鉄扉を蹴って強引に脱出しましたよ?」 「……あたかも当然のように。」 「それで言ったらあなたの能力のパワーも規格外でしょうに。」 「いや私は能力加味で凄いだけで…サナーレさんの場合は素体のポテンシャルが─。」 「龍の異名持ちが何を言っているんだか。」 「チャーリーもでしょ。なんかやたらめったらに難しい言葉使っちゃって。」 「であれば…“能ある鷹は爪を隠す龍”とか?」 「鷹なんだか龍なんだかはっきりしてほしいなぁ…。」 「じゃぁ“韜晦の龍”で結構。」 「あー…うん…まぁ…。」
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