#89『暗雲、崇拝すべきは幻影』

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─世界は冷たいんだ。─ 「震えてる。」 ファーデンがシャッテンの手を握る。 ─無愛想なくせに…暖かい。─ 「…大丈夫。大丈夫。」 「本当に大丈夫…?」 「…洪さん、アレまずく─。」 「しー。」 ファーデンが指を唇にあてた。 「彼女が選んだのはこっちだ。ディスカリータも宗教も引っ込め。」 マルクがその言葉に顔を歪めた。 「朕のおかげでもあるだろう?と言うかそもそも──いや…うん。負けだ。朕の負けだよ。さ、お二人さん、ここは大人しく退こうじゃかいか?」 「どうする、洪さん。」 「どうするって言っても、ディスカリータ的にも…ユイトくん的にもこれはまずいでしょ。一般民が巻き込まれてる…ましてや…。」 洪は言葉を呑んだ。流石に「バイオテロの容疑者が目の前にいるとなると」と付け加えられなかった。 ファーデンはニコリと笑って「じゃぁ、さようなら」と言葉を残し─。 「またどこかで。」 ─その場を去った。
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