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どこに向かっているのかも分からず、シャッテンはファーデンに着いていく。そんな彼女の脳裏ではマルクの言葉が主張をしていた。
何度も手を貸す、救おうと言われたが、どうして私は伸ばされた手を握ろうとしなかったんだろう。シャッテンはそう考えていた。手を握らない理由がない。猫の手も借りたい。救われたい。いくら自分よりも辛い思いをしている人が、この世に数えきれないほど多くいるとしても─。
『辛いなら、辛いでいいんだよ?そこに優劣はないんだよ?』
─マノさんはそう言った。今自分が辛いのかすら私は分からない。空っぽなんだ。─
『自分のことを一番理解しているのは自分じゃない。むしろ他人だったりするもんだよ。』
─シェイネさん。今の私はどんな人間ですか。─
『レーラちゃんは、大事な友達なの!』
シャッテンが歩みを止める。
「どうしたの?急に立ち止ま──あぁ、ダメだよダメダメ。君は─空っぽでなくちゃ。」
「…は?」
「最近…理想のテディベアが作れないんだ。強い人は苦しんで、苦悶の表情を浮かべるのが最高だね。君のような人は…空虚で、影があった方が愛らしい。」
ファーデンの柔い雰囲気は今や消え失せていた。
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