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「どうして光が戻るの?ねぇ、どうして。」
「どうして?そんなの、彼女自身の願いと強さがあるからじゃないか。」
「…あ?」
「あっははは、怖い顔をするなよ〜。朕は、そういう奴が一番嫌いだ。異端だと言っているんだよ。迷える子羊は…朕が救う。所詮操り人形でしかない男が、救済を騙るな。救済はエゴじゃないんだよ。」
「出ていけよそ者。お前みたいな奴は、跡形もなく誰からも悼まれず死ねばいい。」
「よそ者ぉ?朕は君達のお頭さんに頼まれているんだよ。よそ者扱いなんて甚だ可笑しい。」
「マ、マルクさんがどうしてここに…。」
シャッテンのその一言で二人は黙ってしまった。マルクはニコリと目を僅かに細めて微笑む。
シャッテンは今になって気付いたのだ。
─この場に救いはないと。
最善の手段、行動など何も分からなかった。
「君は救われるべき人間なんだ。トリヘックスなんて悪の権化でしかない。世間は新興宗教なんて…とか言うけどね…別にカルトじゃないんだから。」
「手を組んでるなら貴方達だってまずいじゃないですか。」
「まずいぃ?いやいや、朕達は利害の一致なだけだからね。別に協力関係ではないんだよ。いや…協力?まぁどっちでもいっか。」
マルクはニコリと笑った。その笑みがシャッテンの恐怖を引き立てる。
「この世は愛に溢れてなきゃいけない。誰もが自分を認められる世界であれ。自己肯定感は高く持ってなんぼだ。“自分を愛せないなら…誰かを愛せるはずがないじゃないか”。」
「あ──。」
シャッテンはマルクの最後の一言で限界を迎えた。今まで耐えに耐え忍んだ何かがプツリと音を立てて切れた。
そんな彼女の様子がおかしいということに気付いたマルクは、蹲ってしまったシャッテンに語りかける。
「朕が救おう。君は自分だけが可愛くていいんだよ。」
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